稲作経営における水稲収益性の阻害要因と改善指導法
[要約]
稲作経営における水稲収益性格差は,基本技術の遵守,技術の見直し方法,自己評価の適切さから生じている。要因特定,要因と結果の比較,経済評価の指導手順に基づき集落単位で技術と経営管理の点検・評価を行うことで管理行動への生産者意識は改善する。
[キーワード]
水稲,収益性,生産工程管理,経営管理,情報ネットワーク,指導法
[担当]道立中央農試・生産研究部・経営科
[代表連絡先]電話0123-89-2286
[区分]北海道農業・水田・園芸作
[分類]技術・普及
[背景・ねらい]
近年の水稲作の収益性下落は著しい。そこで,北空知A町X地区の集落悉皆調査(n=23)に基づき,稲作経営における水稲作の収益性の規定要因と格差の生じる要因を解明するとともに,その改善対策を検討する。以上に基づき,稲作経営における水稲作の収益性改善に向けた指導法を確立する。
[成果の内容・特徴]
- 同一地区内であっても,水稲単収,品質には固定的な経営間格差が認められる。(表1)
- 収量群ごとに,生産工程管理および経営管理記帳の実施状況は異なり,生産性向上に向けて改善すべき事項も異なる。下位群の改善には,複数の奨励技術の遵守が有効である。中位群の改善には,生産管理の単位の細分化や記帳の活用が有効である。(表1)
- 収量群ごとに水稲生産技術の情報源や情報ネットワーク(生産者間の情報交換)には差がある。情報交換の程度と自己評価や目標設定の適正さには正の相関があり,とりわけ下位群では情報交換の少なさが自己の正確な位置を認識することを阻害している。認識改善を通じて改善行動を促すには,@グループ活動による情報交換の強化,A経営内での検証活動が有効である。(表2)
- 以上に基づいて確立した指導手順は,@生産性における問題状況の再確認,A群区分と特徴把握,B生産工程,圃場別成績の精査,C経済評価,Dグループ活動推進,Eグループ活動の高度化の6段階からなる。(図1)。指導法を実証したところ,生産者の管理行動への意識の改善が認められ,とりわけ下位群において効果は大きい。(図2)
[成果の活用面・留意点]
- 稲作単一経営における水稲部門の収益性格差の解消に活用する。開発した指導法は,とりわけ収益性の低い生産者の認識強化に有効である。
- 農事組合,集落等の地区単位での取り組みをおこなうこと。
平成21年度北海道農業試験会議(成績会議)における課題名および区分
「稲作経営における水稲収益性の阻害要因と改善指導法」(普及推進)
[具体的データ]
[その他]
研究課題名:大規模稲作経営の収益性改善に向けた原価管理手法の確立
予算区分:受託(民間)
研究期間:2007〜2008年度
研究担当者:平石学
発表論文等:平石学(2009)農業経営研究47(1),pp.54-59.
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