グループ出荷による小規模有機農業導入経営の担い手認定要件達成方策
[要約]
グループ出荷により担い手認定要件を満たすためには,外食・量販店への販路開拓,要望された品目導入と輪作に必要な品目の提案,商談担当配置等役割分担の明確化,混載による輸送費低減がポイントとなる。
[キーワード]
有機農業,小規模経営,担い手認定要件,出荷グループ
[担当]道立中央農試・生産研究部・経営科
[代表連絡先]電話0123-89-2286
[区分]北海道農業・水田・園芸作
[分類]技術・参考
[背景・ねらい]
経営所得安定対策等大綱では10ha未満の小規模経営が担い手認定要件(概ね所得480万円以上)を満たすための方策の一つとして,有機農業の導入を挙げられるが,有機農業を導入しても認定要件を満たすことができていない小規模経営が一定層存在する。有機農業導入経営は相対取引を行う経営が多く,流通販売対応が重要となる。そこで,有効な流通販売対応方策の一つであると考えられる出荷グループ運営のポイントを明らかにする。
[成果の内容・特徴]
- 個人で出荷する経営は、流通販売面の課題として、「販売先の情報がない」「出荷経費が高い」「経費に合う取引が出来ない」ことを指摘するが,グループで出荷する経営は,これらを指摘する割合が低く、「ロットを確保できない」「要請された品目をつくれない」を指摘する割合が高い。このことから,出荷グループ運営は,販路開拓や出荷コスト低減,取引条件の向上といった効果を持ちうるが,同時に,取引先からのロットや品目に関する要望への対応という新たな課題を生むと考えられる(図)。
- 優良事例であるグループXの構成員は,グループ運営の効果として,ロットおよび出荷品目数が確保され,大ロットを要請する外食と多品目を要請する量販店双方の要望に対応することが可能となること,輸送費が低減することを指摘する。結果として,全戸が粗収入2,000万円以上をあげるとともに,水稲・たまねぎ経営の1戸を除いて輪作が可能となり,連作障害を回避している(表1)。
- グループXの構成員であるB-3の実績に基づく試算によると,連作障害が生じる場合には,有機農業の導入および輸送費低減による所得増効果は喪失する恐れがある。一方,グループとして輪作のために必要な品目の販路を開拓する場合には,安定的に所得480万円以上を確保し,担い手認定要件を満たすことが可能となる(表2)。
- グループXの事例から,輪作のためには,ア)多品目を出荷できる量販店への販路開拓・要望された品目と同時に逆提案することによる輪作に必要な品目の売り込み,イ)商談担当による連作問題の把握,ウ)労働力が豊富で品目拡大が可能な経営の勧誘・新規就農者の受入による品目数への対応力強化,エ)商談担当の配置等の役割分担の明確化,また,輸送費低減のためには,オ)各構成員の生産物を1箇所に集荷して混載することがポイントになる(表3)。
[成果の活用面・留意点]
- 10ha未満の小規模経営が有機農業を導入して担い手認定要件を達成する上で参考とする。
平成21年度北海道農業試験会議(成績会議)における課題名および区分
「有機農業を導入する小規模経営の担い手認定要件達成方策」(指導参考)
[具体的データ]
[その他]
研究課題名:小規模経営における有機農業導入に向けた経営戦略の構築
予算区分:道費(農政部事業・高度クリーン)
研究期間:2007〜2009年度
研究担当者:濱村寿史
目次へ戻る