全ゲノム増幅法を活用した牛受精卵の多項目遺伝形質分析技術
[要約]
受精卵(胚盤胞)の10〜20%に相当する細胞から抽出した微量なDNAを全ゲノム増幅法によって予備増幅することで多数のQTL解析が可能となり、遺伝形質によっては受精卵段階で選抜できる。
[キーワード]
受精卵、QTL解析、マイクロサテライトマーカー、CW1
[担当]道立畜試・基盤研究部・受精卵移植科
[代表連絡先]電話0156-64-5321
[区分]北海道農業・畜産草地
[分類]技術・参考
[背景・ねらい]
遺伝情報を活用した受精卵の選抜を可能にするためには、わずかなDNA試料から多数の量的形質座位(Quantitative trait locus; QTL)解析を行う必要がある。本試験では、全ゲノム増幅法を用いてDNA試料を予備増幅した後に受精卵のQTL解析を行う技術を検討する。
[成果の内容・特徴]
- Multiple displacement amplification (MDA)法により全ゲノム増幅を行う場合、加熱処理による従来法よりもNaOHによりDNA抽出をした場合にSRYの検出感度が高く、Primer extension preamplification-PCR (PEP-PCR)法に比較しても全ゲノム増幅効率が高い(図1)。
- MDA法を利用して、単一の受精卵(胚盤胞)の10〜20%に相当する細胞から、性別判定ならびにクローディン-16(CL16)、バンド-3(BND3)、ステアリン酸CoA脱飽和酵素(SCD)および血液凝固第XI因子(F11)の遺伝子型を95〜100%の精度で判定できる(表1)。
- 受精卵移植により生産した子牛3頭の性別判定、遺伝子多型解析およびマイクロサテライトマーカー解析(Carcass weight 1;CW1)を行ったところ、F11における1例の誤判定を除きすべての解析結果が受精卵での解析結果と一致したことから、本法により遺伝形質によっては受精卵段階での選抜が可能である(表2および3)。
[成果の活用面・留意点]
- 全ゲノム増幅法を利用した遺伝子型やマイクロサテライト(MS)マーカー解析は、受精卵移植によって牛を改良する際の受精卵の選抜に活用する。
- MSマーカーはその種類によって解析精度が異なる。
- 本成績中では性別や遺伝病原因遺伝子型等も含めてQTL解析として表記した。
平成21年度北海道農業試験会議(成績会議)における課題名および区分
「牛受精卵の多項目遺伝形質分析技術」(指導参考)
[具体的データ]
[その他]
研究課題名:牛の選抜におけるDNAマーカー情報の活用
予算区分:道費(一般)
研究期間:2006〜2009年度
研究担当者:平山 博樹、陰山 聡一、森安 悟、南橋 昭、尾上 貞雄、杉本 昌仁、内藤 学、藤川 朗、草刈 直仁
発表論文等:Hirayama et al., (2008) Animal Science Journal 79:554-560
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