酪農場における牛床管理と乾乳時の乳頭テーピングによる乳頭汚染の低減
[要約]
カウトレーナーを用いた牛床管理により乳頭表面の菌数を低減できる。また、乾乳時の乳頭テーピングは牛体を汚さない良好な牛床管理のもとでは乳頭表面の菌数を低減する効果があり、分娩直後の乳房炎低減が期待できる。
[キーワード]
[担当]道立畜試・基盤研究部・感染予防科・病態生理科
[代表連絡先]電話0156-64-5321
[区分]北海道農業・畜産草地
[分類]技術・普及
[背景・ねらい]
乳牛における環境性微生物の乳房内感染は乾乳初期と分娩前後に多く、環境性乳房炎のコントロールには、牛体や乳房・乳頭の糞尿汚染の低減と乾乳期の乳房内感染の防止が重要である。そこで、カウトレーナーを用いた牛床管理による乳頭汚染の低減効果について検討するとともに、医療用テープを用いた乳頭テーピングを考案し、乾乳時の乳頭テーピングによる乳頭汚染の低減と乳房炎の予防効果について検討する。
[成果の内容・特徴]
- 増菌培養を併用したPCRは、環境性乳房炎の起因菌であるStreptococcus uberis (S.uberis)およびEnterococcus faecalisをサンプル1ml あたり100CFU 検出可能であり、サンプルを10倍階段希釈して増菌することにより、これらの細菌による乳頭汚染を定量的に評価できる。
- 繋ぎ飼養では、カウトレーナーで牛床の糞便汚染をコントロールすることにより、乳頭表面の大腸菌やS.uberisが減少する(図1)。
- 乳頭を医療用のフィルムテープと布テープで2重にテーピング(200〜300円/頭)することで、1週間以上(平均9.0日)の乳頭被覆が可能である。乾乳時に異なる飼養環境で乳頭テーピングを実施したところ、清潔なフリーストール牛床とパドックを有する環境(FS/P)ではテーピング1週間後の乳頭表面の菌数は無処理の乳頭に比べ減少する。しかし、パドックのみで乳頭が糞尿に汚染しやすい環境(P)ではテーピングの効果は見られない。乾乳牛の飼養環境は乳頭テーピングの効果に影響を及ぼすと考えられる(表1)。
- 乾乳時の乳頭テーピングを実施した2農場(A農場;フリーストール、B農場;スタンチョン)では、テーピング実施前と比較して実施後には分娩直後1週間の乳房炎が減少し(表2)、泌乳初期の乳汁中体細胞数も低減する傾向が認められる。
[成果の活用面・留意点]
- 乳頭テーピングは、乾乳期間中に牛体を清潔に保つことができる牛床を有する農場で活用できる。
平成21年度北海道農業試験会議(成績会議)における課題名および区分
「酪農場における牛床管理と乾乳時の乳頭テーピングによる乳頭汚染の低減」(指導参考)
[具体的データ]
[その他]
研究課題名:畜産物の安全・安心を高める乳牛の抗生物質低減技術
抗生物質低減型飼養管理技術の確立
予算区分:道費(一般)、道費(農政部事業)
研究期間:2006〜2008年度
研究担当者:小原潤子、及川学、仙名和浩、川本哲、草刈直仁
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