倒伏に強く混播適性に優れる早生採草用チモシー新品種「北見25号」
[要約]
「北見25号」は早生に属し、採草利用で年間合計乾物収量が多く、チモシー斑点病に対する抵抗性が強い。耐倒伏性が「ノサップ」より強く、混播栽培に必要な競合力が「ノサップ」、「オーロラ」より優れる。
[キーワード]
[担当]道立北見農試・作物研究部・牧草科、ホクレン・飼料部・単味飼料種子課
[代表連絡先]電話0157-47-2633
[区分]北海道農業・畜産草地
[分類]技術・普及
[背景・ねらい]
チモシー早生品種は最も栽培面積が多く、その中で「ノサップ」は、多収で再生力や耐病性に優れることから、長い間早生の基幹品種として利用されてきた。しかし栽培利用する上で、耐倒伏性やマメ科牧草との混播適性などが必ずしも十分ではなかった。そこで、早生で収量性、耐倒伏性、混播適性および採種性に優れる採草利用向け品種を育成する。
[成果の内容・特徴]
- 出穂始は「ノサップ」より1日遅く、「オーロラ」より2日遅く、早晩性は早生に属する(表1)。
- 3か年(2〜4年目)ならびに4か年(1〜4年目)の合計乾物収量はいずれも、「ノサップ」、「オーロラ」より多く、年次別乾物収量は、2年目以降は「ノサップ」、「オーロラ」より多収である(表1)。
- 再生草勢が2番草において「ノサップ」、「オーロラ」より優れ、とくに2番草は多収である(図1)。
- 越冬性は、「ノサップ」と同程度、「オーロラ」と比べ同程度かやや優れる(表1)。耐寒性は"強"で「ノサップ」と同程度で、「オーロラ」よりやや優れる(表1)。
- 斑点病抵抗性は、「ノサップ」、「オーロラ」より優れる(表1)。すじ葉枯病抵抗性は、「ノサップ」、「オーロラ」と同程度である(表1)。
- 耐倒伏性は、「オーロラ」よりやや劣るものの「ノサップ」より優れる(表1)。
- 混播栽培における競合力は、アカクローバ混播条件下における3か年の合計乾物収量が、チモシー収量、チモシーとアカクローバとの合計収量ともに「ノサップ」、「オーロラ」より多く(図2)、またマメ科率は、「ノサップ」、「オーロラ」と比べ低く、より適正な値で推移することから(表1)、「ノサップ」、「オーロラ」より優れる。
- 飼料成分は番草別にみると、1番草と3番草は「ノサップ」と同程度であるが、2番草で「ノサップ」と比べ、繊維の割合がやや高い(表1)。
[成果の活用面・留意点]
- 適応地域は北海道全域とし、「ノサップ」と置き換える。普及見込み面積は83,000haである。
- 年間2-3回の採草利用とする。耐倒伏性、混播適性は良好であるが、1番草は生育状況を観察し、収穫時期など適切な刈取り管理に努める。
平成21年度北海道農業試験会議(成績会議)における課題名および区分
チモシー新品種候補「北見25号」(普及奨励)
[具体的データ]
[その他]
研究課題名:寒地・寒冷地向け安定多収のチモシー品種の育成、新しい育種法による良質多収チモシー品種の開発促進
予算区分:指定試験、共同(民間)
研究期間:1997〜2009年度
研究担当者:藤井弘毅、足利和紀、田中常喜、玉置宏之、佐藤公一、吉澤晃、鳥越昌隆、下小路英男、岩渕慶(ホクレン)、澤田嘉昭(元ホクレン)、大塚博志(ホクレン)、嶋田徹(元ホクレン)
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