北海道の草地に適し効率的な環境保全型ホース牽引式液状ふん尿施用体系
[要約]
北海道の圃場条件に応じて小型化した帯状施用機に、牽引式ホースでふん尿を供給する機械体系は、悪臭等の環境対策、早春早期施用による増収とふん尿施用面積の拡大に寄与し、導入経費低減を要するが、液状ふん尿の地域利用システム確立研究に有効である。
[キーワード]
液状ふん尿、帯状施用、環境保全、機械体系、経済性、ホース
[担当]道立根釧農試・研究部・酪農施設科・草地環境科・経営科、道立畜試・環境草地部・畜産環境科、酪農学園大学、エム・エス・ケー農業機械株式会社
[代表連絡先]電話0153-72-2004
[区分]北海道農業・畜産草地
[分類]研究・参考
[背景・ねらい]
草地表面への液状ふん尿施用時における悪臭の発生とアンモニアの揮散を抑制するため、衝突板による全面施用方式から、空中飛散の少ない帯状施用や浅層注入方式への転換が推奨されている。しかし、現行作業機の作業幅、吐出量、走行性能等に起因する低い作業能率が転換の障害となっている。そこで、環境に配慮し、効率的な液状ふん尿の地域利用システム確立研究に不可欠な機械体系を得るため、ふん尿供給ホースを牽引した帯状施用機による新たな液状ふん尿施用体系を構築し、作業能率の向上に加え、肥効、環境影響、経済性を評価し、本体系の導入条件を検討する。
[成果の内容・特徴]
- 北海道型ホース牽引式帯状施用体系は、欧州から導入したホース牽引式帯状施用機を、施用幅7.5m程度に小型化して機動性を高め、北海道の不定形な圃場、不規則な凹凸等の微地形条件に対応させて改良した新たな液状ふん尿施用体系である(図1)。
- 本体系は3人1組で運用され、5.6haの平坦圃場で測定した作業能率は1.66ha/hrで、この場合、年間の負担可能面積は1,030haと見積もられる(図1)。
- 本体系では、乾物率6%以下の液状ふん尿を、平坦な土地条件で、半径1,400m以内の圃場に施用できる(図1)。
- 同一施用時期の場合、帯状施用は慣行の全面施用と同等の施用効果を示す(データ省略)。本体系はタンカを牽引せず軽量なので、融雪後早期の施用が可能であり、その場合、5月中旬の施用に対して約2割の増収を期待できる(表1)。
- 液状ふん尿施用後の臭気拡散とアンモニア揮散については、帯状施用に期待される抑制効果を確認できる(図2)。また、亜酸化窒素の排出については、透水性のやや悪い土壌条件に帯状施用した場合、全面施用よりも抑制効果が認められる(データ省略)。
- 本体系は導入費用1,685万円、年間固定費418万円、面積当たり変動費4,627円/haと試算される。集落営農的な共同利用を想定して年間負担面積を1,000ha程度とすると、各圃場近傍に貯留槽既設の条件では、本体系の利用経費は慣行のタンカ牽引式全面施用体系より高いが、タンカ牽引式帯状施用体系とは遜色ない程度になる可能性がある(表2)。以上の結果、本体系は導入経費の低減を要するが、環境に配慮し、効率的な液状ふん尿の地域利用システム確立研究において、実証的に導入する供試体系として有効である。
[成果の活用面・留意点]
- 環境に配慮し、効率的な液状ふん尿の地域利用システム確立研究の参考とする。
- 本試験では、乾物率1〜7%の固液分離液と消化液を主として供試した。
平成21年度北海道農業試験会議(成績会議)における課題名および区分
草地における環境に配慮した液状ふん尿利用のための北海道型ホース牽引式帯状施用体系(研究参考)
[具体的データ]
[その他]
研究課題名:酪農地帯の環境・観光と共存可能な低コスト液状ふん尿施用技術
予算区分:外部資金(実用技術開発)
研究期間:2007〜2009年度(平成19〜21年度)
研究担当者:三枝俊哉、関口建二、堂腰顕、吉田邦彦、松本武彦、酒井治、有田敬俊、岡田直樹、日向貴久、三宅俊輔、田村忠、甲田裕幸、湊啓子、渡部敢(以上、道立農畜試)、松中照夫、高橋圭二(以上、酪農学園大)、高村隆、織本昭雄(以上、エム・エス・ケー農機)
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