大豆の苗立枯病の防除対策
[要約]
Pythium属菌による大豆の苗立枯病は出芽前立枯れを引き起こし、地温が低いと多発する。一部の種子塗沫剤は出芽遅延を起こす場合があり、本病の発生を助長させるおそれがあるが、チウラム水和剤Fは種子塗沫で併用しても防除効果が認められ、出芽の向上が期待できる。
[キーワード]
[担当]道立十勝農試・生産研究部・病虫科、作物研究部・大豆科、技術普及部、シンジェンタジャパン株式会社
[代表連絡先]電話0155-62-9812
[区分]北海道農業・生産環境
[分類]技術・参考
[背景・ねらい]
近年、大豆栽培で問題となっている出芽不良には様々な要因の関与が指摘されているが、その一因と考えられる病原菌の特定と、有効な殺菌剤の探索を行う。あわせて、殺虫剤の種子処理が出芽に及ぼす影響を調べ、出芽不良に関与する病害防除との相互関係を明らかにする。
[成果の内容・特徴]
- 出芽不良畑では大豆種子が出芽前に土壌中で腐敗しており、出芽しても子葉の脱落や初生葉の奇形により生育が劣る個体が多く認められる。
- 出芽前立枯れを起こした大豆からは、Pythium属菌が高率に分離される(表1)。さらに播種時に分離菌を接種すると、出芽前立枯れや生育不良など圃場における症状が再現される。
- 病原性を確認したPythium属菌には、形態的特徴などからP. spinosum、P. ultimum var. ultimum および未同定のPythium sp. の3種類が認められ、これらを病原菌として大豆の出芽前後に腐敗や生育障害を伴う症状をダイズ苗立枯病(新称)として提案した。
- 播種直後の温度が低いほど、また低温培養期間が長いほど本病の発生が激しくなり、出芽率が低下する傾向にある(表2)。
- 殺虫剤のチアメトキサム水和剤Fを種子塗沫すると低温条件で発芽の遅延が認められ、さらに播種時の土壌水分が過湿条件になると適湿の場合と比較して出芽が遅延し出芽率も低下する(表3)。
- チウラム水和剤Fの種子塗沫処理は、苗立枯病に対して防除効果が認められ、上記チアメトキサム水和剤Fと併用した場合でも、防除効果がある(表4)。
[成果の活用面・留意点]
- 大豆の苗立枯病対策の参考として活用する。
- 種子生産場面では、斑点細菌病の種子伝染を防除するためにECP・カスガマイシン・チウラム粉剤を使用することが望ましいが、本剤は苗立枯病に対して効果が低いので注意する。
平成21年度北海道農業試験会議(成績会議)における課題名および区分
「大豆の苗立枯病の防除対策」(指導参考)
[具体的データ]
[その他]
研究課題名:平成21年における大豆出芽不良要因の解明と対策
予算区分:共同研究
研究期間:2009年度
研究担当者:清水基滋、三好智明、高宮泰宏、杉山 稔(シンジェンタジャパン(株))
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