てんさい育成系統の培養適性評価と培養効率向上
[要約]
てんさい61系統の不定胚形成系への適用性は、培養適性指数より3系統が「優良」、18系統が「良」と評価される。カルス形成効率の向上のためには子葉の供試が、不定胚形成効率の向上のためには培地のサイトカイニンをthidiazuronにすることが有効である。
[キーワード]
てんさい育成系統、培養適性、カルス形成、子葉、不定胚形成、thidiazuron
[担当]道立中央農試・基盤研究部・細胞育種科
[代表連絡先]電話0123-89-2583
[区分]北海道農業・生物工学
[分類]研究・参考
[背景・ねらい]
てんさいの組織培養適性については系統・品種間差異があり、育成系統の「NK-219mm-O」が高い適性を有することが明らかとなっており、この系統を用いた形質転換法が開発されている。しかし、その他の育成系統については一部を除いて培養適性の優劣が未検討であるため、カルス形成能や不定胚形成能を検定し、培養適性の高い系統を探索する。また、培養適性の低い系統について培養条件等を改良することにより、カルス形成効率および不定胚形成効率の向上をはかる。
[成果の内容・特徴]
- てんさい培養苗の本葉からのカルス形成率は0〜88.9%まで、カルスからの不定胚形成率は0〜98.9%まで、それぞれ系統間で幅広い変異を示すが(表1)、両者の間には明確な相関がなく、両形成能は独立していると考えられる。
- 不定胚形成系への適用性を示す指標として「培養適性指数」を設定し、その指数を基に61系統を分類すると、指数10以上の「優良」に3系統、指数10未満〜1の「良」に18系統、指数1未満〜0.1の「可」に17系統、指数0.1未満の「不良」に23系統が区分される(表1)。
培養適性指数=(カルス形成率/100)×カルス量指数×(不定胚形成率/100) ×カルス当りの不定胚数
(カルス量指数は、1mm未満の塊:0.2、1mm〜5mm未満の塊:1.0、5mm〜10mm未満の塊:2.0、10mm〜15mm未満の塊:3.0、15mm以上の塊:4.0、と定めた)
- 液体振とう培養によるカルスの増殖性には系統間差があり、増殖率(重量)は20倍弱から100倍以上まで幅広い変異を示す(図1)。
- カルス形成率およびカルス量指数の向上には、カルス形成培地への供試部位を本葉から子葉に変えることが有効である(表2)。
- 不定胚形成率(図2)およびカルス当りの不定胚数の向上には、不定胚形成培地に添加するサイトカイニンをこれまでの6-benzylaminopurine (BAP)からthidiazuron (TDZ)に変えることが有効である。
[成果の活用面・留意点]
- 組織培養を利用したてんさいの素材開発に活用できる。
平成21年度北海道農業試験会議(成績会議)における課題名および区分
「てんさい育成系統の培養適性評価と培養効率向上」(研究参考)
[具体的データ]
[その他]
研究課題名:分子育種技術を利用したスーパー耐病性テンサイ品種の育成
予算区分:外部資金(実用技術開発事業)
研究期間:2006〜2009年度
研究担当者:冨田謙一、樋浦里志、玉掛秀人
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