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スピードスプレヤーを用いたナシ黒星病防除における全列走行散布の重要性


[要約]
スピードスプレヤーを用いて4m間隔で植栽されたナシで黒星病の防除を行う場合、1列おきの散布では付着ムラが多くなり、黒星病の防除効果が不十分であるが、全列散布を行うことで、葉表、葉裏の付着程度が高まり、十分な防除効果が得られる。

[キーワード]
ナシ、黒星病、スピードスプレヤー
[担当]
佐賀果樹試・病害虫研

[代表連絡先]電話0952-73-2275	
[区分]九州沖縄農業・病害虫	
[分類]技術・普及	

[背景・ねらい]
ナシの重要病害である黒星病は、年間に10〜20回もの薬剤散布が行われるにもかかわらず多発する場合がある。ナシの薬剤散布ではスピードスプレヤー(SS)が広く利用されているが、その走行法は1列おきの低速走行とやや速い速度で樹と樹の間をすべて走行(全列走行)する2とおりの走行法にわかれていることから、両走行法と黒星病に対する防除効果との関係について明らかにする。

[成果の内容・特徴]
  1. 佐賀県内で最も多い4m間隔の植栽の場合、1列おきの散布では黒星病に対する防除効果が低く、特にSSが通る真上の葉や果実での発病が多くなる(表1)。現地11圃場の調査結果でも、1列おきの散布を行った園では黒星病の発生が多くなる(データ略)。

  2. 植栽された樹と樹の間をすべて走行する(全列走行)と高い防除効果が得られる。薬剤散布後の発病推移を考慮すると、手散布と同程度の防除効果を得るためには、少なくとも430リットル/10a程度の散布量が必要である(表1)。

  3. 図1で示すように、2.8km/h・1.5Mpaの設定で全列走行した場合、10a当たりの散布量は364リットルを要し、葉表の付着指数が72、葉表の付着指数が92である。これに対して1.7km/h・2.0Mpaの設定で1列おきの走行を行った場合、10a当たりの散布量は327リットルを要し、SSが走行した通路の真上では葉裏の付着指数は99と高いが、葉表については同38にとどまる。また、SSが走行した通路と通路の間では葉表の付着指数が61、葉表の付着指数が65にとどまる(図1)。この結果は、全列散布を行うと葉表、葉裏ともに薬液の付着程度が高まるが、1列おきの散布だと同程度の散布量であっても薬液付着が低下することを示している。

  4. 以上の結果から、SSを用いたナシ黒星病の効果的な薬剤防除には樹間全列走行による散布が重要であり、1列おきの散布は推奨できない。なお、ナシの病害防除において、薬剤散布の大部分が黒星病対象のものであることから、ナシ病害の防除対策を構築するにはSSによる全列走行散布を基本とする必要がある。

[成果の活用面・留意点]
  1. 1列おきの走行では低速走行しても十分な防除効果が得られないことから、立地条件の都合上、全列走行ができない園では手散布などで補完すること。

  2. 本試験で得られた成果は(株)共立製SSV-651Fのみの結果であるが,他機種についても応用可能である。また,植栽間隔が4m以上の場合は、今回提示した成果をふまえながら、状況に応じて走行法や散布圧力、走行速度を工夫する必要がある。

[具体的データ]

表1 SSの走行法がナシ黒星病に対する防除効果に及ぼす影響1)


図1 スピードスプレヤーの走行法、走行速度、散布圧力が薬液付着に及ぼす影響

[その他]
研究課題名:ナシの重要地上部病害(黒星病、輪紋病、葉炭疸病)に対する効率的で環境負荷の少ない防除技術の確立
予算区分 :国庫補助
研究期間 :2001〜2006年


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