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作物ゲノム育種研究分野の概要
 各種作物の全塩基配列決定などに見られるように,最近のゲノムサイエンスの進展はめざましいものがあります.農業に関する研究分野の中では,作物育種の分野は,ゲノムサイエンスの成果の活用場面として,最も期待される分野の一つです.一方で,作物育種は,多様な作物種を対象とするため,それぞれの作物種固有の特性を十分に把握し,さらに対象作物における遺伝学などの研究の発展段階に応じた,ゲノムサイエンスの応用技術を開発する ことが必要です.

 私たちの作物ゲノム育種研究では,ゲノム研究の成果を現実の作物育種に活用することを目的に,ゲノム研究の進捗状況が異なるイネ,ダイズ, コムギ、オオムギ等を主な対象作物として,以下のテーマを中心に,教育と研究を進めます.

・作物の品質形成機構の解明
・作物の効率的な形質評価法の開発
・作物の有用形質に関わる遺伝子のマッピングと選抜マーカーの開発
・作物の有用遺伝子のクローニングと機能の解明
・ゲノム情報による選抜を取り入れた新しい作物育種法,育種戦略の策定

 以下に主な対象作物ごとにいくつかの研究例をあげますが,作物ゲノム育種が取り扱う研究領域は,これらにとどまるわけではありません.皆さんの自由な発想で展開することができます.また,この分野で学んでみたい学生の皆さんがこの分野で学ぶに当たってゲノムサイエンスの専門的知識と農学・生物学的知識の両方をはじめから持っている必要はありません.作物ゲノム育種は新しい研究領域です.担当する私たち3名それぞれ専門とする対象作物は異なりますが経験や既存の学問領域にとらわれることなく,皆さんと共に,新たな研究領域を開拓して行きたいと考えています.

乙部千雅子 (教授)
 従来より小麦は、特有のタンパク質であるグルテンの質と量によって、パン用、麺用、菓子用などの用途に使い分けられてきました。主要成分であるデンプンに関しては変異の幅が小さいと考えられていましたが、近年の研究によりデンプンの組成(アミロースとアミロペクチンの割合)を大きく改変した小麦が作られるようになりました。現在は、麺用のグルテン組成で糯(=アミロースを含まない)の小麦や、パン用のグルテン組成でアミロースの割合を従来より低くした小麦など、小麦粉食品の食感改良や新規用途開発につながる、様々な素材となる品種・系統を育成しています。そして、その過程において、DNAマーカーによる選抜を広く実施しています。

     



左:DNAマーカーによるWx遺伝子型選抜例(Wx-A1B1D1全てがnullの場合、糯)
右:ヨウ素液で染色した小麦デンプン(濃紫:通常の小麦、赤茶:糯の小麦)

   
田中淳一 (教授)
 「育種」は増加し続ける地球人口を食料の面から支える、人類にとって極めて重要な技術です。増加を続ける世界の人口を前に、ゲノム解析技術の飛躍的な進歩をどのようにして育種パフォーマンスに結びつけるのか、私たちの知恵が試されています。
 DNAマーカーの利用は初期選抜やIL育成の効率化に貢献する育種技術として定着してきました。これらは従来からある育種技術をDNAマーカーによって効率化するものでした。一方、次世代シーケンサーの爆発的な能力向上など、ゲノム解析技術の進歩はとどまるところを知りません。個体毎にフルゲノム塩基配列が安価に決定できる時代がそう遠くない将来到来することが予測されています。その時、より高い育種パフォーマンスを得るために、どのような育種方法が必要なのでしょうか?従来からある育種技術をゲノム解析技術によって効率化するのではなく、ゲノム情報の効果を最大限に活用できる新たな育種方法の確立が必要だと考えています。

以下はそのための重要なヒントになると考えています。
・ 近年、フルゲノムを対象にDNAマーカーで表現型を予測しながら選抜を行う“ゲノミックセレクション”(以下GSと略)が家畜の改良で効果が実証され、作物育種への展開が期待されています。
・ 自殖性の主要作物の多くがその収量が頭打ちの傾向にある中で、米国のトウモロコシの単収は1930年代に200kg/ha未満であったものが、1970年代に500kg/ha前後、現在では1,000kg/haを超え、その伸びは未だに頭打ちの傾向にありません。トウモロコシ育種では、幅広い遺伝資源を用いて他殖を繰り返しながら淘汰圧を継続的に加える循環選抜法と呼ばれる他殖を活かした方法が用いられています。

 これらを踏まえ、自殖性作物において雄性不稔を用いた効率的な他殖を取入れ、高度な世代促進技術により変異の幅を拡大し、ゲノム情報を用いて効率的に選抜する育種方法の確立を目指します。その実現には、遺伝子組換え技術による効率的な雄性不稔系統作出、環境制御による世代促進技術、人工環境下での安定的な他殖技術、フルゲノムマーカー選抜技術等の開発、高度化が必要です。これは、一研究室で達成し得るものではありません。関連する他分野や海外の研究者とも連携しながら、研究を進めてゆきます。新しい時代を作るための研究を進めるべく、やる気のある学生諸氏の参画を期待します。


松井勝弘 (准教授)
    ソバは、日本のみならず、世界の広い地域で食されています。また、ソバはフラボノイド系化合物を多く含み、機能性が高い食材としても知られています。しかし、ソバは自家不和合性に起因する他植性作物であるため、形質を固定するのが難しいという問題があります。そのような中、私たちは自家和合性のソバ品種を開発し、現在、育種および遺伝解析等の研究に利用しております (Figure 1)。また、これまでソバでは明らかになっていなかったフラボノイド合成系で働く酵素遺伝子やその遺伝子を制御する転写因子遺伝子を単離し、効率的に高い機能性を有する品種の開発を行っております。



Figure. A selection marker linked to S locus in buckwheat. We can deduce the phenotype of S, self-incompatibility or compatibility from the genotype. Lo, Long homostyle (Self-compatibility) the genotype is homozygous, Le, Long homostyle (Self-compatibility) the genotype is hetelozygous P, Pin (Self-incompatibility)