被害の実態 農家・圃場での対策 地域単位での対策 対策まとめ 鳥種別生態と防除 資料 Q & A

●農家・圃場単位の防除対策

■防鳥網

 防鳥網で作物を覆うので、もっとも確実な被害防止策です。大規模な露地栽培では実用的ではありませんが、小規模栽培や果樹栽培では基本技術と言えるでしょう。
 防除対象となる鳥の種類に合わせて網目の大きさを選ぶことと、すき間を作らないこと、網を作物から十分に離し、たるませないことが大切です。網目サイズは細かいほど小さい鳥にも入られませんが、風雪の影響を受けやすくなります。スズメ用には20mm目、ヒヨドリやムクドリには30mm目が一般的です。
 防鳥網は鳥害対策としては優れていますが、設置や撤収の手間がかかり、作業のじゃまになる等の問題があります。コストは、材質や設置方法によってかなり違います。

■物理的刺激を用いた防鳥機器

 強い音声など、物理的な刺激で鳥を追い払おうという機器です。テグス(釣り糸)のように鳥が飛びにくくなるようなものや、吹き流しのように奇異な物体に対する警戒心を利用したものもとりあえずここに含めます。

機器 コメント
爆音器 農地と住居が混在している日本ではプロパンガスによる比較的小音量のものが用いられているが、それでも騒音で苦情が来る。鳥の慣れも早い。
複合型爆音器 爆発音とともに板や旗が打ちあがって落ちてくるもの。商品名ラゾーミサイル、ドンピカなど。5万円程度と比較的高価だが、キジバトには比較的効果が高い。
シェルクラッカー 鉄砲から発射され、上空で炸裂する。小型ピストルタイプもある。海外ではよく使われているようであるが、日本での使用例は空港などに限られる。実弾による駆除と併用すると効果が高い。煙火・花火でも同様の効果がある。
テグス 圃場の上に鳥の飛行のじゃまになるように張ると、カラスのように大形でよく旋回する鳥や夜行性のカモなどにはある程度効果がある。ただし、ハトやスズメのような中小型の鳥には効果がない。果樹園では樹冠より高く張ることが大事。キラキラと光る透明テグスの方がよいという話もある。
防鳥テープ キラキラと光るテープを作物の上に張り巡らす。防雀テープともいう。見えにくいテグスと違って、鳥が当たっていやがるわけではなく、警戒して避けることを期待したもの。あまり効果は期待できないが、安価で気楽に使える。
吹き流し 長いポリマルチを用いたものは、夜行性のヒドリガモによる麦への食害対策に有効だったという報告がある。
磁力 我が国ではブームであるが、効果は疑問。海外の試験でも、ムクドリの巣箱に磁石をセットしても何の影響もないなど、否定的な結果が出ている。ヒヨドリを用いた試験でも効果はなかった。
その他 超音波やレーザー光線を用いる試みもあるが、理論的にも実用上も有効とは思われない。

■生物的刺激を用いた防鳥機器

 鳥の声や鳥の死体(模型含む)、目玉模様など、なんらかの生物的刺激やそれを模したものと考えられる刺激によって鳥を忌避させようという技術です。騒音などの問題は少ないのですが、生物的刺激だからといって慣れの問題が解決するわけではありません。

機器 コメント
ディストレスコール 鳥の悲鳴のことで、遭難声ともいう。市販の音声防鳥機器にもっともよく使われている。ねぐらからの追い払いには有効だが、農地ではすぐに慣れを生じることが多い。ディストレスコールをまねた合成音も用いられている。
目玉模様 昆虫の目玉模様を拡大、誇張した風船などが用いられているが、すぐに慣れを生じる。そもそも鳥が「目玉」とだまされて驚くのかどうかにも疑問がある。
マネキンやかかし 人に似ているほど効果が高いが、やはり慣れを生じる。動作を加えると効果が高まる。こまめに場所や向きを変えることも大事。キジバトに比較的有効。
鳥の死体(模型含む) カラスなどの鳥の死体をぶらさげるもので、昔から各地で行われている。鳥が仲間の死体を見て危険を察知するかどうかは不明。効果があるという人も多いが、やはり慣れを生じる。

■化学物質による摂食防止

 直播田のような広い面積で播種期に有効な対策としては忌避剤がもっとも期待されます。ただ、現在日本では鳥用忌避剤としては数種類しか農薬登録されておらず(表)、その効果も周辺状況などに左右されるのが実状です。
 忌避剤の試験では、室内実験では効果が見られても実際の圃場では安定した効果が得られないことがよくあります。また、効果は期待できても致死率が高く、日本の法体系では使用できるめどがない場合もあります。

現在農薬登録されている忌避剤

有効物質(一般名) 商品名 農薬登録対象、処理 問題点など
チウラム アンレス イネへのスズメ
イネ籾に浸漬処理
もともと殺菌剤。残効性が長く,鳥獣への毒性は低い。絶対的効果は期待できない。魚毒性が強い(C類)。フロアブル剤は種子処理作業中に薬剤が飛ばない。キヒゲンは旧名キヒゲンセット、キヒゲンR-2フロアブルは、旧製品キヒゲンディーフロアブル。
キヒゲン

ダイズ・エダマメへのハト、トウモロコシ・飼料用トウモロコシへのカラス・キジ・ハト

種子に粉衣処理

キヒゲンR-2フロアブル

豆類(種実・未成熟)へのハト・カラス、インゲンマメ・エンドウマメへのキジバト、ムギ類へのハト・キジ・スズメ、イネへのスズメ・ハト・キジバト・カラス・カワラヒワ、雑穀類へのスズメ・ハト・キジバト・キジ・ムクドリ・カラス、ヒマワリへのカラス・ムクドリ・ハト、トウモロコシ・飼料用トウモロコシへのカラス・キジ・ハト・キジバト・スズメ・ムクドリ、ソルガムへのハト・スズメ・キジバト・キジ・ムクドリ・カラス

種子に塗沫処理
イミノクタジン酢酸塩 ベフラン塗布剤3 さくらへのウソ
15倍希釈液を散布する

*2008年7月調べ
*適用鳥種、作物、使い方については、農薬のラベルをよく読んで正しく使用してください。