家畜ふん尿堆肥化副資材としての果樹剪定枝の活用


[要約]

家畜ふんの堆肥化に副資材として果樹剪定枝(梨)を活用する。牛ふん尿混合物及び豚ふんに対する粉砕剪定枝の混合は堆肥化を促進する。その合理的混合量(容積比)は1.5倍量及び同量である。

[キーワード] 家畜ふん尿、堆肥化、剪定枝、副資材、果樹
[担当] 愛知県農業総合試験場・畜産研究所・飼養環境研究室
[連絡先] 0561-62-0085
[区分] 関東東海北陸農業・畜産草地
[分類] 技術・普及  

[背景・ねらい]

家畜ふん尿堆肥化に利用されているおが屑等の木質系副資材の供給がひっ迫している中、焼却や埋却処分が規制されている果樹剪定枝を家畜ふん尿堆肥化の副資材として利用することにより、ふん尿処理の低コスト化を図ると同時に果樹剪定枝の有効利用を図り、畜産と耕種が一体となった地域循環型農業生産技術を確立する。

[成果の内容・特徴]

  1. 牛ふん尿及び豚ふんと繊維状に粉砕した剪定枝の混合堆肥は、下部からの送風により発酵の最高温度は70℃以上になる。切り返し及び水の補給により、発酵温度の上昇は牛ふん及び豚ふんともに概ね3ヶ月間持続する。剪定枝単独では、発酵温度上昇は緩慢である。
  2. 牛ふん尿堆肥及び豚ふん堆肥ともCN比は堆肥化の進行により低くなり、12週目において牛ふん尿堆肥は15前後、豚ふん堆肥で10以下となる。その後は大きく低下しない(表1表2)。
  3. 塩基置換容量(CEC)は堆肥化の進行により上昇し、12週目では牛ふん尿堆肥で70(me/100g)以上、豚ふん堆肥では80(me/100g)前後となる。その後は上昇しない(表1表2)。
  4. 牛ふん尿及び豚ふん堆肥における乾物重量は12週目まで概ね直線的に減少し、牛ふ ん尿堆肥で50%以上、豚ふん堆肥では60%以上の減少率を示す。その後の減少は緩慢となる(図1図2)。

[成果の活用面・留意点]

  1. 剪定枝混合量がふん尿量の0.5倍量では、通気性が確保できず発酵は進行しない。剪定枝混合量が多くても発酵は進行するが、処理容量が増加するために混合量は少ないほど合理的である。また、製品堆肥の水分含量70%以上は問題がある。
  2. 今回試験の都合から剪定枝は剪定後3カ月から6カ月経過したものを用いたが、その水分含量は剪定直後のものに比較して少ない。製品堆肥の水分は堆肥化開始時の水分に影響されるので、留意が必要である。
  3. 水分が低下すると発酵すると進行しないので、堆肥化中の水分に留意する必要があり、乾き過ぎの場合は水を添加する必要がある。
  4. 一次発酵後にきのこが発生するので、堆肥は十分熟成させる必要がある(3カ月以上)。

[具体的データ]


図1 牛ふん尿堆肥の乾物減少推移


図2 豚ふん堆肥の乾物減少推移

[その他]

研究課題名

:果樹園から発生する有機廃棄物リサイクル技術の開発
(果樹剪定枝を活用した家畜ふん尿の堆肥化法)

予算区分

:県単

研究期間

:2000年度〜2001年度

研究担当者

:市川明、中谷洋、増田達明、加納正敏、平山鉄夫

発表論文等

:愛知県農業総合試験場研究報告33号に投稿予定


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