黒毛和種去勢牛の肥育におけるモミ殻給与技術


[要約]

肥育に用いる稲ワラの代替として、モミ殻が利用可能か検討するため、黒毛和種去 勢牛48頭を用いた肥育試験を実施した。その結果、混合飼料給与を前提として肥育前期に稲ワラ80%まで代替できることを明らかにした。

[キーワード] モミ殻、黒毛和種去勢牛、肥育
[担当] 千葉畜総研・生産技術部・肉牛研究室、茨城畜セ・肉用牛研究所・飼養技術研究  室、栃木畜試・畜産技術部・肉牛研究室、群馬畜試・大家畜部・酪農肉牛課
[連絡先] 043-445-4511
[区分] 関東東海北陸農業・畜産草地
[分類] 技術・普及 

[背景・ねらい]

和牛肥育においては、粗飼料として一般に稲ワラが利用されているが、流通量の減少さらに価格の高騰等により、稲ワラ代替粗飼料の開発が強く求められている。そこで、農場副産物など未利用・低利用資源の中からモミ殻に着目し、稲ワラの代替の可能性、さらに利用技術について検討するため、茨城、栃木、群馬、千葉の4試験場による協定試験を実施した。

[成果の内容・特徴]

供試牛は、11ヶ月齢の黒毛和種去勢牛で、各県が各々同一種雄牛の産子を12頭、計48頭を供試した。試験期間は肥育前期35週(11〜19ヶ月齢)とし、試験区はモミ殻給与区(以下:モミ殻区)、稲ワラ給与区(以下:稲ワラ区)の2試験区を設定した。試験期間中の濃厚飼料(丸粒トウモロコシ30%配合)と粗飼料の給与比率は75:25とし、稲ワラ区は粗飼料全量を切断稲ワラとしたのに対し、モミ殻区は粗飼料割合25%のうち20%を未処理モミ殻、残り5%を切断稲ワラとし、濃厚飼料との混合飼料(以下、TMR)として給与した(表1)。肥育後期は、粗飼料は切断稲ワラのみとし濃厚飼料と粗飼料の比率を92:8とし、28ヶ月齢で屠畜した。

  1. 試験期間中の飼料摂取量では、モミ殻区が8.7s、稲ワラ区が8.5sであり有意差は認められなかった。しかし、試験開始後4週時の飼料摂取量では、モミ殻区は稲ワラ区に比較して有意に高い値を示していた。
    CP、澱粉の消化率ではモミ殻区で高い傾向を示し、CPの消化率では有意な差が認め られた。また、未消化で丸粒のまま排出されたトウモロコシの割合は、モミ殻区が有意に低い値を示した(表2)。
  2. 体重では有意な差は認められなかったものの、開始後4週間の1日増体量ではモミ殻区が有意に高い値を示した(表3)。
  3. 枝肉成績では、枝肉重量、ロース芯面積、バラの厚さについては試験区間に差は認められなかったものの、皮下脂肪の厚さについてはモミ殻区が2.3pと有意に薄かった(P<0.05)。肉色についてモミ殻区がやや低い傾向が認められたものの、他の肉質項目については差は認められなかった(表4)。

 以上の結果、黒毛和種去勢牛の肥育前期において、未処理モミ殻は稲ワラの代替として80%(原物重量比)まで代替が可能である。

[成果の活用面・留意点]

  1. 稲ワラの不足している地域においては稲ワラの代替として利用価値がある。またモミ殻利用により飼料費のコスト低減が期待できる。
  2. モミ殻の利用にあたっては、本試験と同様に代替率を80%程度とし、残り20%は稲ワラを併用する。また、飼料の給与方法は濃厚飼料と混合したTMR給与とする。
  3. モミ殻給与にあたっては馴致期間を十分とり、個体観察をしっかり実施する。

[具体的データ]

[その他]

研究課題名

:地域未利用資源と丸粒穀類を組み合わせた飼料給餌方法による低コスト・高品質牛肉生産技術の開発

予算区分

:国補(地域新技術)

研究期間

:1998〜2000年度

研究担当者

:大久保貞裕、井口明浩、山田真希夫、小林正和、森知夫(千葉畜セ)、関正博、矢口勝美、笠井勝美、飯島知一(茨城畜セ肉研)、久利生正邦、神辺佳弘、桜井由美(栃木畜試)、木村容子、浅田勉、砂原弘子(群馬畜試)

発表論文等

:森知夫ら(2001)肉用牛研究会


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