安価なホルモン剤(hCG)を用いた定時人工授精法


[要約]

従来の排卵同期化・定時人工授精法よりも安価なホルモン剤としてhCGを用いたGnRH?PG?hCG法により高率に排卵同期化を行うことが可能である。また、その受胎率も良好である。

[キーワード] hCG、排卵同期化、定時人工授精、受胎率
[担当] 新潟農総研・畜産研究センター・繁殖工学科
[連絡先] 0256-46-3103
[区分] 関東東海北陸農業・畜産草地
[分類] 技術・普及

[背景・ねらい]

牛の繁殖効率向上のために発情・排卵を同期化し一定時間内に人工授精する排卵同期化、定時人工授精法が応用され始めている。しかし、排卵同期化には複数のホルモン剤を投与するためコスト負担が大きい。そこで、排卵同期化法の代表的方法である、Ovsynch法における2回目の性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)を安価なホルモン剤である人絨毛性性腺刺激ホルモン(hCG)に変更しその効果を検討する。

[成果の内容・特徴]

  1. 発情周期の前期(5〜6日)、中期(10〜11日)、後期(15〜16日)の各時期にGnRH、プロスタグランディン(PG)F2aおよびhCGを図1のスケジュールで投与することにより排卵の同期化が可能であった(表1)。
  2. Ovsynch法と2回目のGnRHをhCGに置き換えた本法を発情周期に関係なく開始し、定時人工授精を行ったところ受胎率に差はなく良好であった(表2)。
  3. 2回目のGnRHをhCGに変更することにより、排卵同期化の一回の処置では約700円、一頭妊娠させるためのコストは約1,200円の削減となった(表2)。

[成果の活用面・留意点]

  1. Ovsynch法と同様にhCGを用いた本法でも発情周期の任意の時期に開始し良好な受胎率が得られることから、Ovsynch法よりも安価に分娩後、畜主の希望する期間に発情周期を考慮せず開始し、人工授精を行うことが可能となる。
  2. hCGは抗体を産生させやすいため短期間の連用は避ける。
  3. 未経産牛に対するOvsynch法による排卵同期化は、その効果が経産牛に比べ安定しないとされており、hCGを用いる本法においてもまだ十分に検討していないため実施する場合注意が必要だと考えられる。

[具体的データ]

[その他]

研究課題名

:排卵誘起を用いた人工授精プログラムの低コスト化

予算区分

:県単経常

研究機関

:2000.2002年度

研究担当者

:「佐藤太郎、藤原信子、木村仁徳、梅田雅夫」

発表論文等

:1) 佐藤・N. Melendez.・木村ら、北信越畜産学会報 (2001)
  2) 佐藤・藤原・中田ら、日本獣医学会発表


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