園芸用スプリンクラーを利用した牛舎の暑熱対策


[要約]

園芸用スプリンクラーを利用した簡易散水装置を牛舎内に設置し、既存の送風機を併用した暑熱対策を実施したところ、乳牛の体温が約1℃低下し、乳量の減少を防ぐことができた。散水により牛舎内温度は約1.7℃低下した。

[キーワード] 乳用牛、飼養管理、暑熱対策、スプリンクラー
[担当] 埼玉農総研・畜産支所・飼養管理担当
[連絡先] 048-536-0311
[区分] 関東東海北陸農業・畜産草地
[分類] 技術・参考

[背景・ねらい]

夏季の暑熱ストレスによる乳量や乳成分の低下を防ぐために、これまでにも多くの暑熱対策が実施されている。送風機による暑熱対策が県内で最も普及していたが、近年の異常な酷暑には、十分な効果が得られてない。そこで、園芸用スプリンクラーを利用した簡易散水装置を牛舎内に設置し、既存の送風機を併用した、新しい暑熱対策について検討した。

[成果の内容・特徴]

  1. 設置方法
    牛舎内のミルクパイプラインに沿うように、塩ビ管を配管し、そこから1頭ずつ70cm枝分かれさせ、その先端にスプリンクラーを1個/頭で合計15個設置した。スプリンクラー設置の位置は、飼料が濡れず、牛のき甲〜背〜腰に散水できるようにした。
  2. 散水装置の特徴
    一般水道圧のみ(圧縮ポンプ不要)で散水可能で、費用も1頭当たり約5千円程度であり、安価で簡単な装置である。スプリンクラー散水量が毎分400ml/個と少量であり、細霧より水の粒子が大きいため送風による飛散もない。散水には送風(風速2m/sec以上)を必ず併用する。
  3. 実証試験
    ホルスタイン4頭を試験区、対照区に分けて反転法を実施した。試験区は1回当たり10分間で、10:15、13:15、14:15、15:15の計4回/日散水した。11:00〜13:00と夜間は運動場に放牧し、それ以外は舎飼いで試験区、対照区とも大型送風機で連続送風(牛の位置で風速2m/sec)した。牛床はゴムマットで敷料は使用していない。
  4. 試験結果
    平均日乳量は(表1)に示すとおり、有意な差が認められた(P<0.05)。
    最も暑い13:00計測の体温を基準値0に設定した時、試験区の体温は対照区に比べ、約1℃低下していた(図1)。日中の散水で舎内温度は約1.7℃低下した(図2)。
    舎内の湿度は散水前(平均66.9%)、散水中(平均66.5%)、散水30分後(平均64.9%)で、ほとんど変化が認められなかった(図3)。

[成果の活用面・留意点]

  1. 敷料の吸水による細菌増殖の防止には、散水時間を短縮し、回数を増やす。
  2. 舎内の気温28℃以上になったら散水し、湿度75%以上になったら中止すべき。

[具体的データ]

[その他]

研究課題名

:生乳生産における衛生管理法の改善

予算区分

:県単

研究期間

:1998〜2001年度

研究担当者

:島崎 香、富田道則

発表論文等

:平成13年度関東畜産学会大会講演要旨(2001)


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