マイクロサテライトマーカーを用いた豚の父子判定


[要約]

種雄豚の正確な血統管理を目的として、父親とこどものみのDNAから親子関係が確認できるかどうかについてマイクロサテライトマーカーを用いた遺伝的解析を行った。種雄豚7頭とそのうち4頭を父親に持つ産子34頭の父子判定を実施した結果、16種類マーカーにより85%の産子について種雄豚との親子関係を確認することができた。

[キーワード] マイクロサテライト・父子判定・遺伝子解析
[担当] 群馬畜試・中小家畜部・養豚養鶏課
[連絡先] 027-288-2222
[区分] 関東東海北陸農業・畜産草地
[分類] 技術・参考

[背景・ねらい]

豚の血統は農場での台帳記録をもとに種豚登録制度により確認・管理されている。しかし農場による台帳管理では、記録の誤りが発生する可能性がある。また牛では大規模なDNAデータベースにより種雄牛を中心とした血統管理が実用化されている。そこで豚においてもDNA解析による個体識別技術を開発するため、父親とこどものみのDNAを用い、種雄豚の血統管理に役立てることが可能であるかについて検討した。

[成果の内容・特徴]

  1. 16種類のマイクロサテライトマーカーで種雄豚7頭の遺伝的多様性を解析した。解析に用いたマーカーはすべて、種雄豚間に多型が存在した(表1)。
  2.  種雄豚の解析結果をもとに4腹34頭の産子をタイピングし、種雄豚7頭の中から父親を判定した(表2参照)。台帳記録と一致したのは29頭、確定率は85%であった(表3)。残りの5頭はマーカーの情報をすべて用いても、父親でない種雄豚を親子否定できず、父親を1頭に特定できなかった。

[成果の活用面・留意点]

  1. 両親の遺伝情報がそろわない片親のみの情報だけでも親子判定が可能で、マイクロサテライトマーカーにより父子判定ができることがわかった。これによって豚でDNAによる血統管理ができることが示唆された。
  2. 今回の検討は比較的集団の多様性が乏しい系統造成豚を用いているため、確定率は85%にとどまった。判定率を高めるにはさらに検討するマーカーの数を増やす必要がある。また効率的に判定するには多型性の高いマーカーの検索が必要である。

[具体的デ−タ]

[その他] 

研究課題名 :生物工学的手法を用いた家畜の新育種技術の開発
予算区分  :県単
研究期間  :1999〜2001年度
研究担当者 :松本尚子、後藤美津夫、加藤一雄
発表論文等 :松本ら(2000)群馬畜試研報7:71-76

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