0.5mlストローによるブタ精液の簡易凍結保存法


[要約]

凍結融解後の精子活力、頭帽正常率は0.5mlストローをゴム製ラック上にのせ、液体窒素液面から4cmの位置に20分間静置して凍結した時に最も良好であった。グリセリン平衡時間は凍結、融解後の精子の生存性にほとんど影響しなかった。

[キーワード] ブタ、精液、凍結、0.5mlストロー、グリセリン平衡時間
[担当] 静岡県中小畜試・養豚研究スタッフ
[連絡先] 0537-35-2291
[区分]  関東東海北陸農業・畜産草地
[分類] 科学・参考

[背景・ねらい]

ブタ精液の凍結は5mlのストローを用いた凍結法が一般的な作成方法となっている。そこで本研究では、系統造成豚や希少品種などの遺伝資源を効率的に保存することを目的とし,0.5mlストローによるブタ精液の簡易凍結法のための温度コントロール方法、グリセリン平衡時間について検討した。

[成果の内容・特徴]

  1. ストローの液体窒素表面からの距離を調整することにより冷却速度の調整が可能であり、-15℃〜-30℃温度域のサンプルの冷却速度は3.5〜90.5℃/minであった。過冷却温度は、金属性ラック(4cm)で最も少なく、10cm以上の区では、10℃前後と大きくなった。融解後の最終温度は27℃、-196〜27℃までの加温速度は1672℃/minであった(表1)。
  2. ストローの液体窒素液面からの距離およびグリセリン平衡時間が凍結融解後の精液性状に与える影響について、妊娠能力の確認されている大ヨークシャー種2頭、デュロック種2頭、ランドレース種2頭の6射出精液を用いて調べた。5℃で、2.5%グリセリン添加BF5で希釈し、0.5mlプラスチックストローに封入した。凍結は発泡スチロール容器内の液体窒素液面から4〜20cmの位置で行った。
  3. 金属製ラック(4cm)、ゴム製ラックの4cm, 10cm, 15cmおよび20cm区の凍結融解30分、3時間、および6時間後の精子活力はいずれもゴム製ラックの4cm区で最も高く、20cm区で最も低かった。4cmに置いた金属製ラックとゴム製のラックでは有意差は無いものの、ゴム製ラックの方が優れていた(図1)。頭帽正常精子率は融解30分、3時間および6時間後では金属製ラックが最も高かったが、ゴム製ラック上に置いた4cm区との差は3%以下で、いずれも有意差は無かった。また、20cm区で最も低かった。
  4. グリセリン平衡時間(0,0.5,1,2,3時間)が凍結融解後の精液の性状に与える影響について、6頭の射出精液を用いて調べた。融解後の精子活力は融解30分間後で60.0〜61.77%、融解3時間後で43.3〜52.5%、融解6時間後で40.0〜50.8%となり、処理区の間に有意差は認められなかった(図2)。融解後の頭帽正常精子率は融解30分後で65.0〜71.5%、融解3時間後で47.8〜53.0%、融解6時間後で39.5〜47.7%となり、処理区間に有意差は認められなかった。

[成果の活用面・留意点]

  1. 低コストで凍結精液の作成、保管が可能であり、遺伝資源の保存、体外受精等において利用可能と思われる。
  2. 授精に際しては、卵管内授精、体外受精など少数精子で受精する手法を用いることがが必要である。

[具体的データ]

[その他]

研究課題名 :豚凍結精液による豚遺伝資源の効率的保存技術の開発
予算区分 :県単
研究期間 :2001〜2003年度
研究担当者 :河原崎達雄、赤松裕久、知久幹夫、堀内 篤
発表論文等 :河原崎達雄ら、静岡県中小家畜試験場研究報告掲載予定

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