かんきつに含まれるβ−クリプトキサンチンとオーラプテンの含有量変動


[要約]

温州みかんの果肉中のβ−クリプトキサンチンは糖度の高い果実に多く含まれる。オーラプテンは「川野ナツダイダイ」などのダイダイ類やザボン類の果皮に多く含まれるが、果肉にも含まれる品種のあることが判明した。

[キーワード] かんきつ、温州みかん、中晩柑類、β−クリプトキサンチン、オーラプテン
[担当] 静岡柑橘試・栽培育種研究室、栄養研究室
[連絡先] 0543−34−4853
[区分] 関東東海北陸農業・果樹
[分類] 技術・普及

[背景・ねらい]

β−クリプトキサンチンは温州みかんに多く含まれる色素成分で、カロテノイドのひとつであり、オーラプテンは中晩柑類に含まれるクマリンのひとつである。これらの成分には発がん抑制効果があることが知られ、かんきつ類の機能性成分として注目されている。そこで、これらの有効活用を図るため、β−クリプトキサンチンについては品種、収穫時期、栽培方法、貯蔵条件等が果肉中の含有量に与える影響について、また、オーラプテンについては本県の栽培品種間、幼果と完熟果、およびフラベドとアルベド等の差異について検討する。

[成果の内容・特徴]

  1. β−クリプトキサンチンについて
    1. 調査した3品種はいずれも、収穫時期が遅いほど含有量は多くなる(表1)。
    2. 同一時期の比較では早生温州が「青島温州」より含有量が多いものの、同一成熟度 (「青島温州」は早生温州より1ヶ月遅いと仮定)では品種による差は小さい(表1)。
    3. マルチ栽培やボックス栽培などで栽培される高糖度果実は、慣行のものより含有量が多い(図表略)。
    4. 予措条件や貯蔵期間が含有量に及ぼす影響は小さい(図表略)。
    5. β−クリプトキサンチン含有量と糖度との間に高い相関が認められ、糖度の高い果実により多く含まれる(図1)。
  2. オーラプテンについて
    1. 完熟果の比較では「川野ナツダイダイ」と「スルガエレガント」に多く含まれ、いずれも果肉より果皮に多く含まれる(表2)。
    2. 完熟果にオーラプテンが含まれている「川野ナツダイダイ」と「花柚」は、幼果にも含まれるが、一般的に幼果より完熟果において含有量が多い(図表略)。
    3. 「水晶ブンタン」にはフラベドとアルベド両部位に含まれているが、アルベドよりフラベドに多く含まれる(表3)。

[成果の活用面・留意点]

  1. 消費者に対するかんきつ類の機能性に関するPRは、生果および加工の両面からの取り組みが継続して必要と思われる。

[具体的データ]


図1 糖度と果肉中のβ−クリプトキサンチン含有量との関係

[その他]

研究課題名 :ウンシュウミカンにおけるβ−クリプトキサンチンの含有量増加のための栽培及び加工技術に関する研究
予算区分 :県単
研究期間 :1999〜2000年度
研究担当者 :浜ア櫻
発表論文等 :浜ア(2000)、園学雑、69(別2):514

 

研究課題名 :中晩柑類果実の高付加価値加工適正の研究
予算区分 :県単
研究期間 :1998〜1999年度
研究担当者 :稲葉元良
発表論文等 :稲葉ら(2001)、園学雑、70(別2):369

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