早生で果皮色の赤い完全甘がき新品種「53−1」


[要約]

「興津2号」を母親に、「花御所」を父親とする完全甘がき新品種「53−1」を育成した。「伊豆」に続いて収穫できる早生の甘がき品種で、果皮色が赤く、果実重も250g前後となり、直売に適する。

[キーワード] 早生、完全甘がき、新品種
[担当] 東京農試・園芸部・果樹研究室
[連絡先] 042-524-3191
[区分] 関東東海北陸農業・果樹
[分類] 技術・参考

[背景・ねらい]

東京のかき栽培面積は約60haで、そのうち次郎が56%、富有が29%をしめ、他県から市場出荷される品種と同じ品種が多い。このため、ぶどうや日本なしのように都内直売の利点を生かしにくく、有利販売が困難である。そこで、比較的早生で、市場出荷物と競合しない地方品種となりうる完全甘がきの育成が望まれている。

[成果の内容・特徴]

  1. 昭和43年に東京都農業試験場で、「興津2号(「富有」×「晩御所」)」に「花御所」を交雑して得られた実生から選抜育成した。
  2. 果実はやや扁円形で、大きさは約250gであり、「伊豆」より大きい。果粉は著しく多く、果皮は橙朱色で赤みがある。C.C.値では6.5〜7.0となり、光沢もある。果肉色は橙色で、甘味は多く平均糖度は18%前後である。子室数は8、種子数は3〜4個である(表1)。果実の外観に優れ、直売に向く果実品質を持つ。
  3. 育成地(東京都立川市)においての展葉期は他品種よりやや早く4月10日頃、雌花開花期も同様な傾向で5月22日頃である。成熟期(収穫盛期)は10月中下旬で、「伊豆」についで収穫でき、「次郎、松本早生富有」より早い(表2)。障害果については、果頂裂果性は無く、ヘタスキ性はあるが、発生頻度と程度は「松本早生富有」ほどではない。また、5角変形果が10〜15%発生することがある。樹姿はやや直立、樹勢はやや強めであるが、弱ると雄花が咲くことがある。
  4. 果皮色がカキ用カラーチャート6.5〜7.0の場合に糖度が高い傾向にあるので、これを収穫期の判断に利用できると思われる(表3)。
  5. 花芽の着生は少なく(表4)、収量も他品種に比べやや少ない(1.5t/10a前後)。また、隔年結果性もあり、生産安定性はやや低い。

[成果の活用面・留意点]

  1. 果実重が約250gで、「伊豆」に続いで収穫でき、果皮色に赤みもあり外観がよいので、直売向きの品種である。
  2. 花芽の着生や収量が少なく、隔年結果性もあるので、充実した結果母枝を多く確保できる枝梢管理が必要である。
  3. ヘタスキ果は発するが、商品価値がなくなるほどではない。5角変形果は摘果時に除去する。
  4. 公募により名称の募集を行い「東京紅」と命名、今年2月末に種苗登録出願申請を行った。

[具体的データ]

[その他]

研究課題名 :優良品種の導入、育成 3)果樹の新品種育成および導入新品種の特性評価
予算区分 :都単
研究期間 :1968〜2001年度
研究担当者 :芦川孝三郎、土方 智、川俣恵利、佐藤洋二、矢沢宏太、鈴木知古
発表論文等

目次へ戻る