促成栽培かき「前川次郎」における加温温度に対する発芽までの生育反応


[要約]

1月上旬加温開始の促成栽培かき「前川次郎」において、最低気温が13℃を超えても発芽までの日数は短縮されない。最低気温を発芽までは13℃、発芽から開花終了までは18℃、開花終了後は15℃に管理することにより、9月上旬から収穫が可能となる。

[キーワード] 促成栽培、かき、前川次郎、温度
[担当] 三重科技セ・農業研究部・園芸グループ
[連絡先] 0598-42-6358
[区分] 関東東海北陸農業・果樹
[分類] 技術・参考

[背景・ねらい]

かきの栽培品種は地域によって限定される場合が多く、収穫が一時期に集中しやすいことから、価格安定と作期・労力分散のための促成栽培は有効な技術となる。
かきの促成栽培における効率的な温度管理のためには、生育ステージ別の適温を明らかにする必要があり、これまで種々の報告がなされている。
今回、地植えの促成栽培かき「前川次郎」成木を材料として、特に発芽までの加温温度について検討し、効率的な温度管理の資料を得ようとした。

[成果の内容・特徴]

  1. 1月上旬からの加温(加温機の設定18℃)により、気温(地上120cmで測定)はすぐに上昇し、地温(地下60cmで測定)はそれよりやや遅れて上昇する(図1)。
  2. 生育ステージをあわせて促成栽培と露地栽培の温度を比較すると、発芽40日後までは促成栽培のほうが気温、地温ともに高いが、満開後は逆転する。
  3. 1月上旬加温開始の作型において、平均最低気温が13℃を超えても加温から発芽までの日数は短縮されない(図2A)。
  4. 発芽から満開までの日数と最低気温との関係は、露地栽培も含めて全てが一つの曲線上に分布し(R=0.81)、この期間の最低気温が高いほど生育日数は短い(図2B)。
  5. 開花終了後の最低気温については、加温期間中の平均最低気温14.8℃と18.9℃で収穫期および果実の生育日数に差はない(データ掲載せず)。
  6. 以上のことから、1月上旬加温開始の促成栽培において、生育ステージを発芽期、開花期で区分し、それぞれの時期に効率的な最低気温管理を行うことにより9月上旬から収穫が可能となる。

[成果の活用面・留意点]

  1. かき「前川次郎」促成栽培における最低気温管理の資料となる。
  2. 今回、昼間の気温は換気扇とビニル開閉により30℃を目安として管理した。

[具体的データ]

[その他]

研究課題名 :甘ガキ生産における経営安定のための作期拡大と品質向上技術の確立、新品種の選定及び地域農産物の高品質技術開発
予算区分 :国補(農林水産新技術実用化型)、県単
研究期間 :1996〜2001年度
研究担当者 :伊藤 寿、西川 豊、前川哲男、輪田健二
発表論文等 :1)伊藤・西川ら(H14年園芸学会春季発表予定)
  2)伊藤・西川ら(H14年園芸学会春季発表予定)

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