チャ生葉1枚を対象とした近赤外分光装置とその測定手法の開発


[要約]

チャ生葉1枚のカテキン類およびカフェイン含有量を近赤外法を利用して測定する装置とその検量モデルを開発した。装置の測定面積は直径2mm、6箇所の同時測定が可能であり、測定時間は1枚約2分と迅速で成分育種の早期選抜法として利用が可能である。

[キーワード]  

チャ生葉、近赤外法、カテキン類、EGCG、カフェイン、成分育種

[担当]

静岡県茶試・製茶新製品研究室

[連絡先]

0548-27-2311

[区分]

関東東海北陸農業・茶業

[分類]

科学・普及


[背景・ねらい]

近年、茶の含有成分の機能性が注目されている。育種目標も従来の栽培特性、製品品質を選抜対象とする以外にカテキン類やカフェインに代表される含有成分も選抜対象に加えられている。成分育種を効率的に進める上で、成分を簡便且つ迅速に測定できる装置およびその測定手法の開発が不可欠である。そこで、成分に特徴のある個体を育種の初期段階から選抜を可能にするために、少ない生葉を用いて非破壊で迅速に成分の測定ができる装置とその手法を新たに開発する。

[成果の内容・特徴]

  1. チャ生葉1枚を対象に可視・近赤外領域(400〜2310nm)における吸光度を測定する分光分析装置を開発した(図1)。測定位置はCCDカメラにより取り込まれた画像上でマウスを用い任意に指定する。測定面積は直径2mmの大きさで、同時に6箇所の測定が可能である。測定の所要時間は約2分間と迅速である。反射あるいは透過のいずれかを任意に選択して吸光度の測定が可能である。
  2. 全波長領域で得られたチャ生葉のスペクトルは図2に示すとおり、可視領域の2箇所、近赤外領域の2箇所にピークを持つが、これ以外に顕著なピークは観察されない。
  3. 本装置による吸光度とHPLCを用いた従来法による分析値との関係をPLS法(Partial Least Square Regression )を用い解析し、吸光度からカテキン類(4種の主要カテキンの合計)とカフェイン含量を予測する検量モデルを作成した。検量モデルの精度はクロスバリデーション法により検証し、カテキン類合計では化学分析値とモデルにより予測された値との間に相関係数r=0.859、予測標準誤差SEP=1.92と良好な結果が得られた(図3)。カテキン類のうち、最も含有量の多いEGCGについても同様に両法による分析値との間には相関係数r=0.894、予測標準誤差SEP=1.15と良好な結果が得られた(図4)。しかし、カフェインについてはr=0.736, SEP=0.464の検証結果となり、予測精度は僅かに劣った(図省略)。
  4. 本装置および検量モデルを利用することでチャ生葉1枚からカテキン類、カフェイン含有量を同時に求めることができる。

[成果の活用・留意点]

  1. 本装置を利用することにより、交雑育種あるいは放射線等の照射により誘発された成分に特徴のある個体を成分量の多少を基準にして育種の初期段階から選抜することが可能である。
  2. 検量モデルの予測精度は成分により異なるため、精度を考慮して選抜強度を調整する必要がある。また、測定はあらかじめ茶期、熟度や測定葉位を一定にする必要がある。

[具体的データ]

図1 チャ生葉単葉型近赤外分析装置の略図

図2 チャ生葉の反射及び透過スペクトル

図3 カテキン類(4種)の近赤外法による予測値とHPLC法による実測値との相関

図4 EGCGの近赤外法による予測値とHPLC法による実測値との相関

[その他]

研究課題名

:X線と光技術の利用による効率的なチャ成分育種システムの開発

予算区分

:国庫

研究期間

:1997〜2001年度

研究担当者

:後藤正、小柳津勤、中村順行、畑中義生、西川博

発表論文等

:1)中村ら(1999)茶研報88(別冊):28-29. 
  2)後藤(2001)第17回非破壊計測シンポジウム講演要旨集:188-189. 
  3)Goto (2001)Proc. 2001 Int. Conf. O-CHA(Tea) Culture Sci.IV:118-121.


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