全国卸売業者の青果物取り扱い(入荷・セリ)実態と地域特性


[要約]

全国の青果物卸売業者を対象に青果物直接入荷割合、地元産青果物割合、実質セリ取引割合によって順位付けし、全国的位置が把握できる行政指導参考図表を作成した。また、卸売市場の形態別に卸売業者のクラスター分析などを行い、関東東山、東北に多い「地元産・セリ低率型」、四国、九州沖縄に多い「高率バランス型」など青果物取り扱いの特徴を明らかにした。

[キーワード] 青果物、卸売市場、卸売業者、直接入荷、地元産、セリ取引
[担当] 三重科技農研・地域経営グループ
[連絡先] 0598-42-6356
[区分] 関東東海北陸農業・関東東海・経営
[分類] 行政・参考

[背景・ねらい]

卸売市場の青果物流通は量販店の影響を強く受け、取引形態の変化や地場産品の取り扱い重視が進んでいる。一方、卸売市場基本方針では取引の透明性確保、相対取引範囲の弾力的拡大、集荷販売力の強化などが目標の一つとなっている。このため県の卸売業者指導では、〈1〉転送を除く産地からの青果物直接入荷割合、〈2〉直接入荷量に占める県内産などの地元産青果物の割合、〈3〉青果物取引における実質セリ割合などが要点の一つとなっている。これら取引等については関東と関西、大都市部と地方などの地域性が指摘される一方、卸売業者の数値として全国的把握が十分に行われていない状況にある。そこで、個別卸売業者の青果物取り扱いに関する全国的位置や地域特性が定量的に把握できる調査・分析を行い、行政などに提供する。

[成果の内容・特徴]

  1. 青果物直接入荷割合(中央値)は、全卸売業者で70%となっており卸売市場の形態による差異は比較的小さい。地元産青果物割合(中央値)は、全卸売業者では40%であるが、民営地方卸売市場は60%と高い。また、実質セリ割合(中央値)は、全卸売業者で40%となっているが公設地方卸売市場では25%と低く、民営地方卸売市場は60%と高い(表1)。
  2. 各項目の割合を基に、卸売市場の形態別に卸売業者を順位付けしたものが図1である。このグラフは卸売業者の全国的位置を読みとり、その差異を視覚的に捉えられる。各項目の割合とも、ほぼ100%から0%(最低直接入荷割合は中央卸売市場で20%、同公設地方卸売市場で10%)まで広く分布し、卸売業者の青果物取り扱いが多様であることを示している。
  3. クラスター分析による類型化(中央値)をみると、中央卸売市場では直接入荷割合が81%と高く実質セリ割合は50%で地元産が20%と低い「地元産低率型」、直接入荷割合だけが70%と高い「地元産・セリ低率型」、各項目とも比較的割合の高い「高率バランス型」に区分できる。「地元産・セリ低率型」、「高率バランス型」と捉えられるタイプは公設及び民営地方卸売市場にも存在している。なお、公設地方卸売市場はセリ割合だけが低い「セリ低率型」、民営地方卸売市場は各項目とも割合が低い「低率バランス型」が特徴となっている(表2)。
  4. 卸売業者が所在する地域と各類型の関係をみると、中央卸売市場では北陸、中国、近畿が「地元産低率型」、関東東山、東北、東海が「地元産・セリ低率型」、北海道、四国、九州沖縄が「高率バランス型」がそれぞれ多いと考えられ、公設地方卸売市場、民営地方卸売市場でも図2に示すような関係になっている。また、どの卸売市場の形態においても関東東山、東北は「地元産・セリ低率型」、また四国、九州沖縄は「高率バランス型」の多いことが共通している。

[成果の活用面・留意点]

  1. 県行政指導などの場面で、対象となる卸売業者の青果物取り扱い実態を個別に把握すれば、各青果物取り扱い割合の全国的位置や数値比較、タイプ(類型)などが簡単に検討できる。
  2. 分析した3項目の割合は、卸売業者によって調査票に記入された概数として捉える必要がある。

[具体的データ]

[その他]

研究課題名 :卸売市場等流通対策推進事業
予算区分 :行政執行委任
研究期間 :2001年度
研究担当者 :大泉賢吾、松井靖典

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