葉数をもとにしたキュウリ養液土耕栽培の施肥管理技術


[要約]

抑制並びに半促成栽培キュウリにおいて、2週間ごとの株当たり増加葉数を指標にして当該期間の窒素吸収量を推定できる。この値を基に作成した施肥指標により、収量の低下を招かずに窒素施肥量を削減できる。

[キーワード] キュウリ、養液土耕、窒素施肥、生育量、環境保全型栽培技術
[担当] 神奈川農総研・生産技術部
[連絡先] 0463-58-0333
[区分] 関東東海北陸農業・関東東海・総合研究
[分類] 技術・普及

[背景・ねらい] 

キュウリは多肥栽培される傾向があり、現地での1作あたりN施肥量は、施肥基準量より50%多い50kg/10a以上の施肥も多く、環境保全上、合理的な施肥管理技術が求められている。養液土耕栽培は、これらを改善する有効な技術であるが、生産者が容易にできる生育診断技術がなく、普及の妨げとなっている。そこで、特別な装置を使わず、Nの最小必要量をリアルタイムで把握できる生育診断技術を開発し、より実用性の高い施肥管理技術を確立する。

[成果の内容・特徴]

  1. 摘心栽培法で抑制作(品種‘なおよし’)、半促成作(品種‘シャープ301’)の栽培を行い、2週間単位で施肥量を調節しながら解体調査をを行ったところ、2週間ごとの株あたり増加葉数と窒素吸収量の間には正の相関がみられる(図1A、B)。Nの施肥は硝安と硝酸カリでN:K2O=1:1となるように調整した液肥を用いる。
  2. 図1より得られた回帰式により、2週間・aあたりの葉の増加枚数から窒素吸収量を推定する式
    抑制キュウリの窒素吸収量(g/a/14日)=葉の増加枚数(枚/m2/14日)×3.83+185.8
    半促成キュウリの窒素吸収量(g/a/14日)=葉の増加枚数(枚/m2/14日)×4.41+218.9
    が得られる。
  3. 上記の推定式を利用して得た2週間あたりの窒素吸収量を、次の2週間の窒素施肥量として養液土耕栽培を行うと、養液土耕慣行(定量施肥)栽培と同等の収量を保ちながら、抑制作で16%、半促成作で24%の減肥が可能である(表1)。
  4. 栽植密度と2週間あたりの葉の増加枚数から適正な施肥量を推定する、窒素施肥量早見表の利用が簡便である(表3)。

[成果の活用面・留意点]

  1. この窒素施肥量早見表は摘心栽培法で適用する。
  2. 1回の調査あたり3株の葉数を数え、平均値を用いる。
    リン酸や石灰、苦土、微量要素は、点滴チューブが詰まる原因になりやすいため、通常の土耕栽培と同様、耕起時に施用する。また、堆肥はバーク堆肥など、窒素含量の少ないものを用いる。
  3. 土壌分析はかん水直前の点滴チューブ直下の土壌で行う。乾土分析で硝酸濃度が100mg/100gを越えている場合は、施肥を中止してかん水のみ行い、2週間後に再度、硝酸濃度を測定する。前作の残肥がある場合も同様に対処する。
  4. 収穫打ち切り前2週間は施肥を中止し、かん水のみとする。
  5. 適正かん水量はほ場条件により異なるので、適宜調節する。

[具体的データ]

[その他]

研究課題名

:施設キュウリ・トマトの養液土耕栽培技術の確立

予算区分

:国庫補助(地域基幹)

研究期間

:1999〜2001年度

研究担当者

:佐藤達雄、松浦京子、水野信義、成松次郎

発表論文等

:1)佐藤ら(2000) 園学雑69別2:353.
  2)佐藤ら(2001) 園学雑70別2:275.


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