キュウリ灰色かび病に対する微生物農薬の効果的な散布方法


[要約]

施設栽培温室に設置された暖房機の送風口に0.3mm目合いの網袋に入れたバチルス・ズブチリス水和剤を取り付け、暖房機を稼働すると、送風ダクトにより粉態のまま連続的にバチルス菌が散布され、キュウリ灰色かび病に対して高い防除効果が認められる。

[キーワード] 微生物農薬散布法、バチルス・ズブチリス水和剤、キュウリ灰色かび病
[担当] 岐阜農技研・環境部
[連絡先] 058-239-3135
[区分] 関東東海北陸農業・関東東海・病害虫
[分類] 技術・参考

[背景・ねらい]

近年、施設野菜では、環境負荷の少ない防除法の開発が求められており、天敵等を利用した生物防除が急速に普及しつつある。バチルス・ズブチリス水和剤等の微生物農薬は、散布後の植物体上の移動が少なく多回数散布が必要であるが、従来の水を使用した散布方法では、人的労力に負うところが大きく、改善が求められていた。また、水和剤散布による施設内の過湿等も課題となっていた。そこで、微生物農薬の水和剤を水で希釈せず粉態のまま暖房機の送風ダクトを使用して散布し、その効果とハウス内での動態及び実用性を明らかにする。

[成果の内容・特徴]

  1. バチルス・ズブチリス水和剤(以下、バチルス菌)を、0.3mm目合いの網袋(ストッキングでよい)に入れ(300g/10a)、暖房機の送風口付近の親ダクト内部に、吊り下げる(図2)。導入ダクトには3m間隔で直径5cmの穴をあけ、ダクト先端は風速を調節するため下部を半分程度絞る。暖房機は、設定温度に応じて随時稼動し、送風によってバチルス菌を施設内に飛散させる。
  2. バチルス菌は、施設内の各地点で飛散が認められた(図1表1)。また、散布開始後20日間以上にわたって施設内では安定した飛散が認められた(図3)。
  3. 散布開始2週間後のキュウリ花弁上には、2.0×10cfu/g(乾燥花弁)のバチルス菌が認められた(図表省略)。また、無処理区の花弁上には12種類以上の糸状菌が認められたのに対し、処理区の花弁ではCladosporium属菌など3〜4種類の糸状菌しか認められなかった(図表省略)。
  4. 暖房機の送風口付近のダクト内部の温度は、最高45℃前後であり、バチルス菌の生育温度範囲(10〜50℃)内であった(図表省略)。
  5. キュウリ栽培施設で防除効果を調べると、処理区では灰色かび病の発生は認められず、慣行薬剤の体系防除区と同等の効果が認められた(表2)。

[成果の活用面・留意点]

  1. 本法によるバチルス・ズブチリス水和剤の使用方法は、現在適用拡大の試験中である。
  2. バチルス・ズブチリス水和剤は、治療効果がないので初発生前から散布を開始する。
  3. ダクト内のバチルス・ズブチリス水和剤は、タルクが用いてあるため吸湿しやすく固化し、飛散しにくくなる場合がある。製剤の減り具合や、飛散状況を定期的にチェックし、製剤を揉みほぐすなどの作業が必要である。

[具体的データ]

[その他]

研究課題名 :病害虫総合管理技術推進対策事業
予算区分 :国補
研究期間 :2000〜2002年度
研究担当者 :渡辺秀樹・田口義広・鈴木隆志・勝山直樹
発表論文等 :1)田口・鈴木・渡辺ら (2000) 関西病虫研報 42:69-70.
  2)田口(2001)第16回報農会シンポジウム:33-44(講演要旨).
  3)特許申請中

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