年内どりダイコン栽培における土壌残存窒素を考慮した好適窒素施肥量


[要約]

秋まき年内どりダイコンでは、L級の規格である根重1kgを得るための残存窒素と施肥窒素の合計量は9月上旬播種ではマルチ栽培で3kg/10a、無マルチ栽培で4kg/10a、9月中旬播種では両栽培とも6kg/10a、9月下旬播種ではマルチ栽培で9〜12kg/10aである。

[キーワード] ダイコン、土壌残存窒素、減肥、播種期、マルチ栽培
[担当] 千葉農総研・生産環境部・環境機能研究室
[連絡先] 043-291-9995
[区分] 関東東海北陸農業・関東東海・土壌肥料、関東東海北陸農業・関東東海・総合研究
[分類] 技術・普及 

[背景・ねらい]

秋まき年内どりダイコン栽培における千葉県の窒素施肥基準は、9月上旬播種で9kg/10a、9月下旬播種で15kg/10aであり、播種期が遅くなるほど多肥傾向となっている。そこで、減肥及び環境負荷を低減するための施肥法として、土壌残存窒素を考慮した播種期別好適窒素施肥量について検討する。

[成果の内容・特徴]

  1. 秋まき年内どりダイコン栽培では、播種直後の土壌中無機態窒素量が根重の日増加量に影響する(図1)。播種直後の土壌中無機態窒素量は残存窒素と施肥窒素の合計量に相当すると考えられることから、土壌中の残存窒素を考慮した播種期別好適施肥量を明らかにした。なお、可給態窒素は対象とした土壌において、3.3±0.6mg/100g乾土で大きな圃場間差はなかった。
  2. 9月上旬播種では、残存窒素と施肥窒素の合計量がマルチ栽培で3kg/10a、無マルチ栽培で6kg/10aで1kgの根重が得られる(図2)。また、施肥直後の土壌中無機態窒素量が異なる圃場において、マルチ栽培は2.7mg/100g乾土(窒素2.7kg/10aに相当)、無マルチ栽培は4.3mg/100g乾土(窒素4.3kg/10aに相当)で1kgの根重が得られる(図3)。
  3. 9月中旬播種では、マルチ栽培、無マルチ栽培とも、残存窒素と施肥窒素の合計量が6kg/10aで1kgの根重が得られる(図4)。
  4. 9月下旬播種では、マルチ栽培で残存窒素と施肥窒素の合計量が9〜12kg/10aで1kgの根重が得られる(図5)。しかし、無マルチ栽培では施肥量の多少に関わらず商品価値のある1kgの根重は得られない。

[成果の活用面・留意点]

  1. 普及対象地域:黒ボク土地帯とする。
  2. 残存窒素:残存窒素は土壌の仮比重を0.7とし、表層から15cmまでの無機態窒素量(mg/100g乾土)の数値を施肥窒素量(kg/10a)に換算して算出した。
  3. 土壌中無機態窒素:土壌中無機態窒素はEC値から換算式 N=22.4×EC-0.794(Nはmg/100g風乾土、ECはmS/cm)により推定できる。ただし、EC値が0.1以下の場合は、土壌中無機態窒素は無いものと考えて良い。
  4. マルチ栽培:9月下旬に播種する場合はマルチ栽培とする。
  5. リン酸と加里の施肥量:施肥基準に準じて施用する。

[具体的データ]

     施肥直後の土壌中無機態窒素量(Nmg/乾土100g)

図1 施肥直後の土壌中無機態窒素とダイコンの根重日増加量(採土位置:0〜15cm)

図2 9月上旬播種におけるダイコンの根重(その1)

         (播種:2001年9月5日 収穫:11月8日)

         施肥直後の土壌中無機態窒素量(mg/100g乾土)

図3 9月上旬播種におけるダイコンの根重(その2)

     (播種:1999年月9月9日 収穫:11月10日)

図4 9月中旬播種におけるダイコンの根重

     (播種:2000年9月14日 収穫:11月16日)

 図5 9月下旬播種におけるダイコンの根重

   (播種:2000年9月25日 収穫:12月8日)

[その他]

研究課題名 :有機質資材投入等による持続的安定生産技術
予算区分 :国補(地域基幹)
研究期間 :1997〜2001年度
研究担当者 :山本二美、松丸恒夫、草川知行、斉藤研二、大塚英一
発表論文等

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