鶏ふん堆肥の窒素成分安定のための堆肥生産条件


[要約]

一連の堆肥生産過程において、生ふんの搬出、堆肥化、後熟保管といった各段階で尿酸は固有の分解速度を示す。各段階における尿酸分解の変動要因を考慮することで、鶏ふん堆肥中の尿酸量を制御することができる。

[キーワード] 鶏ふん堆肥、尿酸分解速度、品質安定、
[担当] 三重科技・農研・生物機能開発グループ、循環機能開発グループ
[連絡先] 0298-38-6361
[区分] 関東東海北陸農業・関東東海・土壌肥料
[分類] 技術・参考

[背景・ねらい]

鶏ふん堆肥は有機質肥料としての利用価値が高く、成分含有量が安定した、肥効の明確な高品質堆肥の生産技術の確立が求められている。鶏ふん堆肥中の尿酸量は、窒素肥効を支配する要因であり、一連の堆肥化過程において、尿酸の分解を制御することが肥効の安定した高品質堆肥の生産に繋がると考えられる。そこで、生ふんの搬出から製品堆肥の出荷までの一連の生産段階における処理条件と尿酸の分解速度との関係について明確にする。

[成果の内容・特徴]

  1. 生ふん中の全窒素量及び尿酸態窒素量は、鶏舎での貯留期間により大きく影響を受ける。ウインドレス鶏舎では貯留期間が数日程度と短く、回収間隔が一定であるため、全窒素及び尿酸態窒素量の高い、安定した生ふんが供給されることになる。一方、低・高床鶏舎では貯留期間が数ヶ月と長く、尿酸態窒素が分解し、NH3ガスとして揮散するため、搬出時点で尿酸態窒素の60〜70%が減少する。このため、成分安定を図るには、鶏舎からの生ふんの搬出を素早く、一定間隔で行うことが重要である。(表1
  2. 堆肥化段階での尿酸態窒素の減少速度は、ハウス撹拌発酵方式と密閉縦型方式の間に大きな差があり、密閉縦型方式での尿酸態窒素の分解速度はハウス撹拌方式の約1/10に抑制される。(図1
  3. 縦型密閉で処理された堆肥は、堆肥水分を30%と乾燥気味の条件で堆積保管した場合、2週間で尿酸態窒素は半減する。一方、縦型密閉から取り出された直後に水分15%以下にまで温風乾燥させた製品ではほとんど変化は認められない。(図2
  4. 鶏ふん堆肥の品質(窒素肥効)安定、及び均質堆肥生産は、表2に示した(1)鶏舎からのふん搬出段階、(2)堆肥化段階、(3)後熟保管段階の各段階での尿酸の分解速度を考慮し、変動要因をいかに制御するかにかかっている。なお、各段階での1日乾物1g当たりの尿酸分解量は、(1)では0.2〜0.3mg、(2)では密閉縦型方式の場合0.1〜0.2mg、ハウス乾燥方式の場合で1.5〜2.0mg、(3)の後熟堆積では0.5mg程度である。

[成果の活用面・留意点]

  1. 採卵鶏は通常市販の配合飼料で飼育されているため、排泄直後の新鮮生ふん中の全窒素量及び尿酸量はほぼ一定である。このため、堆肥生産段階での尿酸の変動要因と分解速度を考慮し、処理条件を農家間で一定にすることで均質な肥効を有する堆肥の安定供給が可能となる。

[具体的データ]

[その他]

研究課題名 :畜産に係るエコシステム創出に関する技術開発
予算区分 :国庫委託
研究期間 :2000〜2004年度
研究担当者 :原 正之、村上圭一、藤原孝之

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