畑土壌に添加した有機物中の水溶性有機態炭素が脱窒促進に及ぼす影響


[要約]

各種有機物を土壌に添加してから2日後に嫌気的条件で脱窒活性を測定すると、それぞれの有機物の水溶性有機態炭素量と高い正の相関関係を示す。また、42日後の脱窒活性は2日後に比べかなり減少するが、その減少比率と水溶性有機態炭素含有率に負の相関関係が認められる。

[キーワード] 脱窒活性、有機物添加、水溶性有機態炭素、畑土壌
[担当] 中央農研・土壌肥料部・土壌生物研究室
[連絡先] 0298-38-8828
[区分] 関東東海北陸農業・関東東海・土壌肥料
[分類] 科学・参考

[背景・ねらい]

様々な有機物資源が施用されているわが国の農耕地において、脱窒の窒素収支に及ぼす影響を明らかにすることは、有機物資源の有効利用を図り、有機物投入に伴うの環境負荷を評価する上で重要である。脱窒は、施用有機物の特性により量的に著しい変動を示すにも拘わらず、その影響の評価に関しては充分な整理がなされていない。そこで、各種有機物の脱窒促進効果と有機物特性の関係について、特に水溶性有機態炭素含量に着目して、室内土壌培養実験で検討する。

[成果の内容・特徴]

  1. 各種有機物乾燥粉末試料を添加2日後の土壌(淡色黒ボク土)について、嫌気的条件、充分量の硝酸態窒素存在下で脱窒活性を測定すると、脱窒量が時間と共に直線的に増加するものと放物線的に増加するものに分かれた。概して、既に発酵の進んでいる堆肥は前者、新鮮有機物は後者に該当した(図1)。それぞれの脱窒量の経時的変化は直線と二次曲線で良く近似できた(表1−1)。
  2. 脱窒活性の測定を開始してから24時間後の脱窒速度を、添加した各種有機物の水溶性有機態炭素量に対してプロットすると高い正の相関関係を示した(図2)。
  3. 有機物添加42日後の土壌について、同様に脱窒活性を測定すると、脱窒ガスの生成曲線は有機物の種類によらず直線で近似できた(表1−2)。2日後の脱窒活性に対する42日後の脱窒活性の比をとり、それぞれの有機物の水溶性有機態炭素含有率に対してプロットすると負の相関関係を示し、脱窒への影響に関する有機物間差が縮小して行く傾向が認められた(図3)。

[成果の活用面・留意点]

  1. 図2に示されている関係から、有機物添加直後の土壌脱窒ポテンシャルに及ぼす影響を相対的に比較することができる。また、有機物添加後数十日経過した時の土壌の脱窒ポテンシャルへの影響は、図2及び図3等の関係から推測可能である。
  2. 現場の畑土壌では、有機物の影響に加え、土壌水分、地温、土壌型、土壌圧密度等に脱窒が支配されるので、本成果情報のデータはあくまでも有機物の影響を相対比較するときの参考データとなるべきものである。

[具体的データ]

[その他]

研究課題名 :畑地土壌の窒素環境容量に及ぼす微生物要因の影響解明
予算区分 :プロジェクト研究「自然循環」
研究期間 :2000〜2002年度
研究担当者 :西尾 隆、岡 紀邦
発表論文 :なし

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