直播「コシヒカリ」の穂肥施用のための葉色補正を加えた発育段階予測


[要約]

直播「コシヒカリ」の幼穂形成期および出穂期は、播種日以降の一日毎の日平均気温に基づく発育速度を積算することで予測可能であり、幼穂形成期の推定は葉色により補正が可能である。また、幼穂長15mmの1回目の穂肥施用時期はDVI=0.79である。

[キーワード] 直播、コシヒカリ、DVI、幼穂形成期、出穂期、葉色
[担当] 富山農技セ・農業試験場・機械営農課
[連絡先] 076-429-5280
[区分] 関東東海北陸農業・北陸・水田畑作物、北陸・総合研究
[分類] 技術・普及

[背景・ねらい]

「コシヒカリ」の直播栽培は移植栽培に比べて収量や品質が不安定なため、的確に発育段階を予測し、適期に肥培管理を行う必要がある。そこで、播種日以降の一日毎の日平均気温による発育速度から直播「コシヒカリ」の発育段階予測式を作成するとともに、適正な穂肥施用時期および出穂期の推定を可能にする。

[成果の内容・特徴]

  1. 4月中旬から5月中旬に播種した「コシヒカリ」について、堀江ら(日作紀59:687-695)に従い作成した播種期以降の発育段階予測式により、播種〜幼穂形成期(DVI:0〜0.7)および幼穂形成期〜出穂期(DVI:0.7〜1.0)をそれぞれの平均推定誤差2.99日および1.84日の精度で予測できる(表1)。
  2. 苗立数の変動が大きい場合、葉色の変異が大きくなり、これに伴って幼穂形成期も大きく異なる。そこで、幼穂形成期直前の葉色(SPAD値)と幼穂形成期の推定誤差の間には負の相関関係があることから、葉色による幼穂形成期の推定値の補正が可能である(表1図1)。
  3. DVIと幼穂長の間には非対称のロジステック曲線が当てはまる。DVIと幼穂長の関係から幼穂長15mmの1回目の穂肥施用時期はDVI=0.79(平年値で幼穂形成期後7日目)である(図2)。
  4. 式1〜式4を組み合わせて用いることで、発育段階や穂肥施用時期を高い精度で予測することが可能である(図3)。

[成果の活用面・留意点]

  1. 砂壌土地域の4月中旬から5月中旬播種のコシヒカリ直播栽培に活用できる。
  2. 幼穂形成期の生育量が適正な場合(条播:草丈×茎数×葉色=140,000 北陸農業研究成果情報第17号:9-10を参照)、DVI=0.79に1回目穂肥としてN1.5kg/10a施用する。

[具体的データ]

表1 直播コシヒカリの発育段階予測式


図1 幼穂形成期におけるSPAD値と幼穂形成期の推定誤差との関係
  注)データ数は38(1999〜2001年)
    回帰式:y=−0.37x+12.81(式3)


図2 DVI値と幼穂長の関係
  注)曲線式:y=188.9/{1+exp(30.9-36.0x)}(式4)


図3 葉色補正を組み込んだ発育段階予測式利用のフローチャート
  注)葉色が淡く、推定値−実測値>0の場合

[その他]

研究課題名 :直播水稲における発育段階予測技術の確立
予算区分 :国補(地域基幹)
研究期間 :1999〜2001年度
研究担当者 :野村幹雄、高橋 渉、尾島輝佳、南山 恵、中谷朋恵
発表論文等 :なし

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