茎質を簡易に把握する携帯用測定器


[要約]

茎質を簡易に測定する稲株切断抵抗測定器を開発した。稲株切断抵抗値は、乾物重、茎質(乾物重/草丈)と相関があり、茎質を簡便に評価する手法として応用できる。

[キーワード] 切断抵抗測定器、切断抵抗値、茎質、生育診断
[担当] 石川農研・企画経営部・経営機械科
[連絡先] 076-257-6911
[区分] 関東東海北陸農業・北陸・経営作業技術、関東東海北陸農業・北陸・水田畑作物
[分類] 技術・参考

[背景・ねらい]

石川県では「うまい・きれい石川米づくり運動」を展開しており、「コシヒカリ」の玄米タンパク6.5%(うまい)、整粒歩合80%(きれい)を目指している。これらの数値目標を実現するためには、生産者が稲の生育ステージ別の適正生育量を診断し、適切な栽培管理を行う必要がある。その生育量を簡便に診断するための診断基準器の開発要素として株(茎)の硬さに着目した。従来の草丈、茎数等の量的な生育調査は必ずしも茎質を代表としているものとは言えず、また、茎質を現場で測定する手法もこれまで開発されていない。一方、茎質を簡易に把握できれば、それをもとに株全体の生育量を推定することも可能であり、茎質に応じた適正な水管理や肥培管理等指導できるようになる。そこで、茎質を表す指標として株元の硬さを想定し、圃場内で簡易に測定する稲株切断抵抗測定器を試作し、「コシヒカリ」を対象として稲株切断抵抗値と生育量との関係を明らかにした。

[成果の内容・特徴]

  1. 稲株切断抵抗測定器は、計測本体、ロードセル、替え刃及びデジタル指示計で構成されており、携帯部分の重さ約540gの軽量なハンディタイプである(図1)。
  2. 稲株切断抵抗値の測定法は、圃場内において測定器に株を固定し、グリップ方式により稲株を切断し、その最大抵抗値をデジタル指示計で読み取る簡易なものであり、稲株の切断は地際から10cmの高さで行う。
  3. 稲株切断抵抗値は乾物重と正の相関があり、これは量的な把握につながる。一方、同一茎数株内でも稲株切断抵抗値は大きく異なるが、これは茎質の違いに関連すると想定される(図2)。
  4. 一茎当たりの稲株切断抵抗値は、茎質指標である乾物重/草丈とも高い相関がある(図3)。同一茎数株内でも稲株切断抵抗値が異なるのは、乾物重の違いに起因することが示されたが、これは茎質の違いによるものであり、稲株切断抵抗値によって量的な把握及び質的な把握が可能となり、稲株切断抵抗値は稲体の健全度を表す指標の一つとして評価できる。

[成果の活用面・留意点]

  1. 稲株切断抵抗測定器は、非破壊型稲株強度測定器の開発(株周と茎硬さの同時測定による生育量の検定)に先立つ試作器である。
  2. 稲株切断抵抗測定器は、ロードセルの定格容量が約10kgfと小さいため、1株当たり茎数の少ない直播条播を対象として試験を実施した。今後は移植対応の測定器への改良を進め、適正生育量の指標値を作成する。

[具体的データ]


図1 稲株切断抵抗測定器の概要

計測本体   材質:アルミ他  重量:約500g
     外形寸法:150W×217H×40D (突起部含まず) 
ロードセル 定格容量:98.6N(10.06kgf)
重量:約40g
  外形寸法:70W×22H×12D (突起部含まず)
替え刃 45×45mm
デジタル指示計 型式F480 重量:約500g


図2  同一茎数株の乾物重の頻度分布と稲株切断抵抗値
(対象株:幼穂形成期の平均茎数の株、12本/株)


図3 稲株切断抵抗値と茎質
 (調査時期:幼穂形成期及び出穂前10日) 

 [その他]

研究課題名

:うまい・きれい石川米生産技術確立研究
2)コシヒカリの品質・食味・収量の安定生産技術
(2)生育ステージ別生育診断基準器の開発

予算区分

:県単

研究期間

:2001〜2002年度

研究担当者

:国立卓生、猪野雅栽、中村啓二、永畠秀樹、大西良祐、畑中博英

発表論文等

:なし


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