植物細胞培養によるイチゴのアントシアニン生産法


[要約]

イチゴ(品種:女峰)の継代培養細胞系から、選抜及びホルモンフリー化により赤色のアントシアニン生産培養系を確立した。増殖と色素生産に合成植物ホルモンを使用せずにイチゴのアントシアニンを効率的に生産できる。

[キーワード] イチゴ、ホルモンフリー化、アントシアニン生産培養系
[担当] 新潟農総研食研セ・食品工学科
[連絡先] 0256-52-3267
[区分] 関東東海北陸農業・北陸・流通加工
[分類] 技術・参考

[背景・ねらい]

機能性食品素材は次世代の食品素材として注目され、開発及び利用についての研究が必要とされている。そこで、抗酸化性等の機能性を有する植物の赤い色素であるアントシアニンを、植物細胞培養法によって安定的に生産するため、増殖能とアントシアニン生産能を併せ持ち、植物成長調節物質である合成ホルモンを必要としないホルモンフリー株を細胞選抜する。

[成果の内容・特徴]

  1. イチゴの若い葉由来の培養細胞株(白色)を表1の培養条件で継代培養し、出現した赤色細胞の選抜を行うことにより、アントシアニン生産能と増殖能を備えた株が約30回継代培養したカルスから得られる。
  2. ホルモン無添加の培地で増殖するアントシアニン生産株は、合成植物ホルモン濃度を徐々に低減させた培地に移植し、選抜・継代を繰り返すことにより得られる(継代数107回,期間約4年)。本株はイチゴの約4倍の色素量である(図1)。
  3. 培養細胞が生産するアントシアニンの種類はイチゴのそれらと同様である。なお、ペラルゴニジンのグルコース配糖体にマロン酸の結合したPg-3-malonyl glucosideは生産されない(表2)。

[成果の活用面・留意点]

液体の培地を使用した植物細胞の培養系と大量培養条件の検討を行い、実用的なイチゴのアントシアニン生産方法を確立する必要がある。

[具体的データ]

[その他]

研究課題名 :バイテク手法による機能性食品素材の開発
予算区分 :県単特別
研究期間 :1997〜2001年度
研究担当者 :浅野 聡、大坪 貞視
発表論文等 :1)浅野ら、「イチゴ培養細胞を用いたアントシアニンの製造方法」、特願2000-99688号
 2)浅野ら (2000) 日本植物細胞分子生物学会講演要旨:48 

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