刃を自動消毒する整枝用ハサミ


[要約]
開発したハサミは磁石とスイッチレバーの組み合せでハサミの開閉動作と連動して、切断後に毎回自動で刃を消毒する。電源が不要で、軽量で使い勝手がよく、トマトの整枝作業によるかいよう病の病原菌伝染防止に効果がある。

[キーワード]消毒液、自動噴霧、ハサミ、トマト、かいよう病、整枝、二次伝染

[担当]群馬農技セ・生産環境部・機械施設グループ
[連絡先]電話 027-269-9122
[区分]関東東海北陸農業・作業技術
[分類]技術・普及


[背景・ねらい]
 トマトなどの整枝作業に用いるハサミによる病原菌の伝染を防止するため、消毒液自動噴霧ハサミを開発した(平成13年度研究成果情報)。これは制御回路と電磁バルブで消毒液の噴霧タイミングを調節するものだが、システムの簡易化や全体の軽量化、ノズルやチューブの取り付け方法等の課題が残され、それらの改良を試みた。

[成果の内容・特徴]
1. 自動消毒ハサミは、刃の両側に装着した2個の噴霧ノズル、柄に取り付けたスイッチレバー、磁石、機械式バルブ、チューブ類、および手押し蓄圧タンク(1リットル用)から構成される(図1)。
2. 機械式バルブと磁石およびスイッチレバーを組み合わせることで、ハサミの開閉と連動して、切断後に毎回自動的に消毒液を刃全体に噴霧する。ハサミを閉じた状態(切断)では、磁石とスイッチレバーが密着するがバルブは閉じたままで、次にハサミが開くと磁石の力によりスイッチレバーが操作されバルブが開き消毒液が噴霧される。一定以上ハサミが開くとレバーは磁石から離れて元に戻りバルブが閉じる(図2)。
3. 噴霧量はハサミを開く動作が遅いと多く、速いと少なくなるが、毎回の自動噴霧のため1回あたり0.1mL程度で充分刃先を消毒できる。タンクに消毒液を1リットル入れ20回加圧すると0.1MPaになり、およそ0.05MPaになるまで安定して噴霧できる。その間の噴霧回数は600回程度である。
4. 機械式バルブを採用し、電気系統を必要としないため軽量、安価である。重量は全体で580g、ハサミ部は190gである。
5. トマトかいよう病の場合、消毒液に次亜塩素酸カルシウム70%製剤500倍液を使うと、二次伝染防止効果が高い。1回あたりの切断時間は慣行のハサミより15%程度多くなる(表1)。

[成果の活用面・留意点]
1. 平成16年度から(株)共立より試験販売(約15,000円)される
2. ハサミが摩耗した場合は交換できる(メーカー供給)。
3. 消毒剤として次亜塩素酸カルシウムを使う場合は、使用方法に注意する。ハサミを閉じたときに噴霧しないで開く途中で噴霧するので、下葉などを切断した後に通路でハサミを開くようにし、消毒液を作物にかけない。
4. トマトかいよう病以外に同じような伝染経路を持つ他作物の二次伝染防止にも利用可能である。

[具体的データ]

[その他]

研究課題名:消毒液自動噴霧ハサミの実用化
予算区分:県単
研究期間:2002〜2003年度
研究担当者:原昌生、漆原寿彦、村田公夫、須田功一、小林和弘、武田浩一(共立)
発表論文等:1)特許出願中、2)2003年関東東山病害虫研究会会報第49集39-41


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