現地ほ場での土壌溶液EC濃度の迅速評価法


[要約]
4電極土壌EC計と土壌水分計で計測される見かけの土壌電気伝導度ECaと体積含水率θから、施肥管理の指標となる土壌溶液電気伝導度ECwを現場で迅速に評価できる。その結果、従来計測できなかった現場ほ場のECwの常時モニターが可能となる。

[キーワード]4電極土壌EC計、土壌水分計、土壌溶液電気伝導度

[担当]愛知農総試・環境基盤研究部・農業工学グループ
[連絡先]電話 0561-62-0085
[区分]関東東海北陸農業・作業技術、関東東海北陸農業・関東東海・総合研究
[分類]技術・普及


[背景・ねらい]
 土壌溶液のECwは、テンシオメータ・カップ内を負圧にする土壌溶液採取器を使用して測定するが、潅水直後のような土壌水が多い場合に限定される。現地ほ場での土壌溶液のECwを常時モニターすることは施肥管理上大切であるが、全く実現していない。
 Amenteら(2000)は、高価なTDR装置により見かけの土壌電気伝導度ECaと体積含水率θを計測して砂質土壌の土壌溶液電気伝導度ECwを評価したが、本試験は4電極土壌EC計(図1-a)とFDR土壌水分計(図1-b)を用いてECwを迅速に評価する。

[成果の内容・特徴]
1. 試験は、砂質土壌(乾土)に、蒸留水及び2、5、10、40dS/mの4濃度のKCl溶液を飽和するまで一定量づつ散布後撹拌して落下法にて容器に詰め、見かけの土壌電気伝導度ECa、土壌水分計及び重量法による体積含水率θを計測したところ、ECaは毛管飽和されるθ<0.27までθの増加と共に増大し、重力水で完全飽和される間は一定値を示す(図2)。なお、砂質土壌は木曽川砂を使用したので、土壌自体のECwは小さく、散布した溶液濃度がほぼECwとなり、最終的な抽出飽和ECwが真値である。
2. ECaとECwとθとの関係は、次式のRhoadesら(1989)のモデルがある。
ECa=ECw・θ・Tc+ECs、伝達係数Tc=a・θ+b
ECaは、右辺第1項の間隙中の溶液の電導成分と、右辺第2項の吸着イオンによる土壌粒子表面の電導成分によって構成され、定数a、bは土質によって決められる。
供試した砂質土壌はほとんど粘土分がないので、ECs=0として適応させると、
ECa/ECw=2.99θ−0.125θという関係が認められ(図3)、ECaとθを計測すれば砂質土壌のECwは求めることができる。その結果、これまで計測できなかった土壌中で引き起こされる蒸発によるECwの濃縮現象も正確に評価できる。
3. 土性の異なる3カ所の茶園土壌でのECwは1〜3dS/mと大きく、相当な残留肥料があり、ECa/ECwとθとの関係は粘土含量によって変わる(図4)。
4. 土壌水分測定には、正確・瞬時に計測できるFDR土壌水分計(Campbell社のCS-615センサ)を使用したが、測定値が土壌ECの影響を受けるので、4電極土壌EC計による測定値ECaによって補正し、体積含水率θを求める(図省略)。
5. 現場ほ場でのECwの迅速評価手順
(1)4電極土壌EC計と土壌水分計によってECaとθ(ECaで補正)を計測する。
(2)指先の触感で分かる粘土含量からECs、a、b、を決定する(Rhoadesが提唱)。
(3)Rhoadesらのモデル式によってECwを算出する。

[成果の活用面・留意点]
1. 本試験データの適用は砂質土のみであるが、粘土分の異なる土質毎のECs、a、bを明らかにして広範な使用に対応させる必要がある。
Rhoadesらは、ECs=0.014(%clay)+0.084を提案しているが、今後検証を要する。
2. 4電極土壌EC計とFDR土壌水分計は既に市販されている。

[具体的データ]
 

[その他]

研究課題名:てん茶地帯からの環境負荷物質の流出防止と地形連鎖を利用した浄化技術
予算区分:国補(地域基幹)
研究期間:2003年度
研究担当者:伊藤良三、榊原正典
参考文献:平成11年度関東東海農業の新技術p280〜286、平成12年度新技術p230〜235


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