家畜ふん堆肥中リン酸の性質と肥効


[要約]
家畜ふん堆肥中リン酸は73〜87%がクエン酸可溶性(水溶性含む)であり、肥効は、土壌中の有効態リン酸含量が極めて低い条件では、過リン酸石灰やようりんと同程度かそれ以上である。

[キーワード]家畜ふん堆肥、リン酸

[担当]新潟畜研セ・環境・飼料科
[連絡先]電話 0256-46-3103
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(畜産環境)
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
 家畜ふん堆肥中のリン酸は含有量が多いにもかかわらず性質が不明である。一般的な堆肥中リン酸の肥効率は60%とされているが、処理の多様化に伴い数値の見直しが必要となっている。一方、最近の農地ではリン酸集積が進んでおり、リン酸過剰による弊害も指摘されている。これには家畜ふん堆肥中のリン酸が評価されていないことも一因としてあげられる。そこで、家畜ふん堆肥中リン酸の性質と肥効を解明し、化学肥料の代替としての利用の可能性を探る。

[成果の内容・特徴]

1. 全リン酸に対する水溶性リン酸の割合は5〜15%と少ない(図1)。
2. 2%クエン酸可溶性リン酸(水溶性リン酸+水不溶ク溶性リン酸)の割合は牛ふん堆肥で87%、豚ふん堆肥で87%、鶏ふん堆肥で73%であり、ほとんどが植物可給態と考えられる。
3. 家畜ふん堆肥中リン酸の肥効は、土壌中の有効態リン酸含量が極めて低い条件では、過リン酸石灰やようりんと同程度かそれ以上である(図2)。
4. 以上のことから、家畜ふん堆肥中のリン酸はほとんど水不溶性であるので土壌ECを上げにくいリン酸肥料として化学肥料と同等に利用できる。すなわち、家畜ふん堆肥中リン酸により化学肥料リン酸を代替できる。

[成果の活用面・留意点]

1. 家畜ふん堆肥中リン酸は緩効性であるので、基肥として利用する。
2. 家畜ふん堆肥中のリン酸含量はばらつきが大きいので、施肥設計前に含量を把握しておく。
3. リン酸集積が進んでいる土壌に家畜ふん堆肥を施用する場合、堆肥由来リン酸施用量が堆肥施用量の制限要因となる。

[具体的データ]




[その他]

研究課題名:各種堆肥の品質評価技術の開発及び品質評価基準の策定
予算区分:国委
研究期間:2002〜2003年度
研究担当者:小柳渉、和田富広、安藤義昭


目次へ戻る