豚用飼料中の銅・亜鉛濃度の適正水準


[要約]
豚用配合飼料中には日本飼養標準に示される要求量以上に銅・亜鉛が添加されているが、離乳子豚期および肥育前期においては、要求量を満たす添加量であれば豚の発育に影響はなく、豚ぷん堆肥中の銅・亜鉛含量を低減することができる。

[キーワード]ブタ、銅、亜鉛、発育、配合飼料

[担当]富山畜試・養豚課
[連絡先]電話 076-469-5921
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(畜産環境)
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
 豚用配合飼料には、成長促進・飼料効率改善および下痢防止のため銅・亜鉛が他の家畜用配合飼料と比べて多く添加されている。このため、豚ぷん堆肥は牛ふん堆肥等に比較して重金属の含量が多く、施用量によっては土壌への重金属蓄積が懸念される。
 そこで、飼料中の銅・亜鉛含量が豚の発育へ及ぼす影響およびふん中排泄量を調査し、適正水準を明らかにする。

[成果の内容・特徴]
1. 離乳子豚期では、銅・亜鉛を日本飼養標準の要求量に準じて添加した飼料を給与した1区と他の試験区の間で発育に有意差はなく、銅・亜鉛添加量の増加に伴う一定の傾向は見られない(表1)。
2. 肥育前期では、銅・亜鉛を日本飼養標準の要求量に準じて添加した飼料を給与した1 区でも一日平均増体重が1,000gを越える良好な発育を示し、他の試験区との間に有意差はない。また、背脂肪厚(体長1/2部位)の増加も各区の間に有意差はなく、銅・亜鉛 の添加量の増加に伴う一定の傾向は見られない(表2)。
3. ふん中銅・亜鉛濃度は、離乳子豚期および肥育前期ともに、飼料への銅・亜鉛添加量の低減に伴い、減少する(図1)。
4. 離乳子豚期では、銅・亜鉛の添加量増加に伴い、ふんの状態は茶褐色から黒色に変化したが、硬さに差は見られない。また、離乳子豚期、肥育前期ともに下痢の発生は見られず、健康状態は良好である。

[成果の活用面・留意点]
1. 離乳子豚期および肥育前期において、銅・亜鉛濃度を日本飼養標準が示す要求量(離乳子豚期:銅5ppm、亜鉛80ppm、肥育前期:銅3.5ppm、亜鉛55ppm)であれば豚の発育に影響はなく、豚ぷん堆肥中の銅・亜鉛含量を低減できる。
2. 本試験はSPF豚を用いた結果である。したがって、飼養環境によっては銅・亜鉛の添加量を低減すると下痢などを起こす可能性が考えられるため、豚の健康状態を見ながら添加量に留意する必要がある。


[具体的データ]






[その他]
研究課題名:重金属などの環境負荷物質排泄量を低減するための豚の栄養管理技術の開発
予算区分:国補(先端技術)
研究期間:2001〜2003年度
研究担当者:水上暁美、新山栄一
発表論文等:水上ら(2003)第101回日本畜産学会講演要旨集:68

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