妊娠牛の移行期における適正な飼料中粗蛋白質含量


[要約]
経産牛、初妊牛における移行期(分娩前3週間)の飼料乾物中CP含量を、経産牛では12%、初妊牛では14%にすることにより、飼料摂取量、繁殖成績及び疾病発生状況等に影響することなく、分娩後の乳量、乳成分量は高くなる。

[キーワード]乳用牛、移行期、蛋白質、分娩前後の飼養法、繁殖成績

[担当]茨城畜セ・酪農研究室(乳牛協定研究・分娩前後飼養研究グループ主査担当)
[連絡先]電話 0299-43-3333
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(大家畜)
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
 近年、移行期の飼養管理が分娩後の泌乳と繁殖性に強く関係していることが認識され、注目されている。しかし、移行期の栄養、特に粗蛋白質(CP)の給与水準に関する研究は少なく、その時期の飼養管理法の確立が求められている。
そこで、産乳成績と繁殖性を高く保つ移行期の飼料給与法の確立を目的として、移行期において飼料中CP含量の異なる2処理区を設けて分娩後の乳量、乳成分及び繁殖性に及ぼす影響について検討する。

[成果の内容・特徴]
1. 移行期の飼料中CP含量が、乳牛の産乳性と繁殖性におよぼす影響について、140頭の乳牛(全国10場所の経産牛70頭および初妊牛70頭)を用いて各々2年間の反復試験を実施した。試験期間は分娩前9週から分娩後14週(-9W〜-4W:分娩前期、-3W〜分娩:移行期、分娩〜14W:泌乳期)までとした。飼料としては、チモシー乾草(総乾物給与量に対し、分娩前期:60% 移行期:40% 分娩後:26%)、アルファルファヘイキューブ(総乾物給与量に対し、分娩前期:30% 移行期:25% 分娩後:14%)と指定配合飼料(総乾物給与量に対し、分娩前期:10% 移行期:35% 分娩後:60%)のTMR(表1)を用いた。処理区を移行期だけに設け飼料乾物中のCP含量を経産牛で12.1%(低CP区)vs15.3%(高CP区)、初妊牛で11.6%(低CP区)vs14.1%(高CP区)とした。
2. 乾物摂取量は、経産牛・初妊牛とも試験期間を通して両区に差は見られない。
3. 経産牛、初妊牛とも平均日乳量は高CP区が高く推移し(図1)、経産牛では牛乳生産効率が有意に高い。しかし、泌乳期において体重の回復が低CP区より高CP区が遅い傾向がある。
4. 繁殖成績において、経産牛では授精回数、受胎率は高CP区より低CP区のほうが良好な成績を示し、初妊牛では高CP区で受胎までの日数が伸びる傾向があるが、受胎率に差は認められない(表2)。
5. 移行期において、窒素(N)の尿中排泄量および蓄積量は高CP区が有意に高くなる。飼料中のCP含量とN蓄積、N排泄の関係は、初妊牛では経産牛と異なり、高CP区では、N蓄積量増加が31gと大きく増加する。一方、尿中N排泄量は20g増加したが、経産牛の場合と比べると増加量が少ない。すなわち、飼料中のCP含量を高めると、初妊牛では尿中排泄量の増加よりもN蓄積の増加が多く、窒素の利用性は良いことが伺われる。この時、低CP区のN蓄積量は経産牛、初妊牛とも50gでほぼ同じである(表3)。
 以上のことから、経産牛の移行期の飼料乾物中CP含量としては12%程度、初妊牛で14%程度が望ましいと考える。

[成果の活用面・留意点]
1. 正確な飼料計算に基づいて高泌乳牛に分娩3週間程度前から給与する。
2. 初妊牛の移行期の乾物摂取量は、経産牛より低いため、体重の1.6%程度の乾物量を給与する。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:乳牛の分娩前後の飼養法に関する研究(移行期の栄養水準が産乳と繁殖におよぼす研究)
予算区分 :県単
研究期間 :「1999〜2002年度」
研究担当者:楠原徹、足立憲隆、宇田三男
発表論文等:楠ら(2003)、日本畜産学会第101回大会、講演要旨集、p。
      楠ら、茨城県畜産センター研究報告32号、p。
研究分担: 乳牛協定研究・繁殖性改善グループ
(茨城畜セ、埼玉畜研、静岡畜試、岐阜畜研、宮城畜試、福島畜試、京都畜技セ、鳥取畜試、熊本畜研、全国酪農業協同組合連合会、畜草研)

目次へ戻る