低蛋白質飼料の飼料構成を考慮することで代謝アミノ酸組成が改善され優れた泌乳成績が得られる


[要約]
泌乳最盛期牛に対する飼料中の粗蛋白質含量およびルーメン分解性蛋白質含量を、それぞれ14.5%、9.5%程度とし、飼料中のリジン・メチオニン含量を考慮することで、ふん尿の窒素排せつ量は少なく、牛の代謝生理に大きな影響を及ぼすことなく、優れた泌乳成績が得られる。

[キーワード]乳用牛、蛋白質、窒素、アミノ酸、代謝

[担当]長野畜試・酪農部、群馬畜試・酪農肉牛課、千葉畜研セ・乳牛研究室、栃木酪試・飼養技術部、新潟畜研セ・酪農肉牛科、愛知畜研・酪農研究室、東京畜試・応用技術部、山梨酪試・乳肉用牛科、畜草研・生理栄養部
[連絡先]電話 0263-52-1188
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(大家畜)
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
 我々は粗蛋白質含量およびルーメン分解性・非分解性蛋白質含量の異なる飼料の給与が乳生産、排せつ量および窒素出納にどの様な影響を及ぼすかについて検討を行い、泌乳最盛期牛に対し粗蛋白質含量が14.5%、ルーメン分解性蛋白質含量が9.5%の時、高い乳生産と窒素排泄量の低減の両立がはかれる結果を得た。しかし蛋白質総量としては充分であっても、飼料によっては特定のアミノ酸が制限となって生産が抑えられるケースも想定しうる。そこで、粗蛋白質含量を14.5%程度とした、飼料構成の異なる飼料を用い、アミノ酸組成の違いが乳生産や蛋白質代謝および血中代謝成分に及ぼす影響を検討する。

[成果の内容・特徴]
1. 公立8試験場の2産以上の乳牛53頭に分娩後5〜105日(15週間)まで試験飼料をTMRで給与して飼養試験を実施した。試験飼料は蛋白質中のリジン含量が多いL区、メチオニン含量の多いM区およびL区にメチオニン製剤(Mepron85)を0.03%添加したLM区の3区とした(表1)。
2. 体重、乾物摂取量(DMI)、乾物摂取量体重比(DMI/BW)、乳量および4%脂肪補正乳量(FCM)、乳中尿素態窒素(MUN)、ルーメン内容液は試験区間に差がなかったが、M区において血漿中のGOT・γGTPは高く、総コレステロールは高い傾向であった(表2,3)。
3. 尿中アラントイン濃度から菌体蛋白合成量を、またインサイチュ試験(12時間)からルーメン非分解性蛋白質量を推定し、それらから代謝アミノ酸量を推定したところ、M区においてリジン、メチオニンともに低い値を示した(表4)。
4. 分娩16週前後におけるふん尿中の窒素排せつ量は、L区372g/d、M区362g/d、LM区361g/dと少なく、試験区間に差は見られなかった。
5. これらの結果から、泌乳最盛期牛に対する飼料中の粗蛋白質含量およびルーメン分解性蛋白質含量をそれぞれ14.5%、9.5%程度にした場合、飼料構成を変えても乳生産に影響はない。ただし、飼料構成によっては代謝リジンやメチオニンが不足し、牛の健康上問題となる可能性が考えられる。そこで、飼料中にこれらのアミノ酸が不足しないように考慮することが望ましいが、代謝メチオニンの不足はメチオニン製剤の添加により回避できる。

[成果の活用面・留意点]
1. 泌乳前期において、窒素排せつ量を低減する飼料給与技術として活用できる。
2. 初産および2産については、増体量を考慮するとCP14.5%では不足する可能性がある。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:環境に配慮した高泌乳牛のための飼養管理技術の確立
予算区分:県単
研究期間:2000〜2002年度
研究担当者:古賀照章、大久保吉啓、井上和典、田村哲生、関誠、阿久津和弘、篠原晃、石崎重信、渡邊晴生、佐藤精、倉石照美、横山紅子、梶川博、栗原光規
発表論文等:日本畜産学会103回大会にて発表予定

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