卵巣摘出による黒毛和種雌牛の肥育効果


[要約]
黒毛和種雌牛の卵巣を除去し肥育することで、通常と比べ牛同士の闘争や発情行動を抑えることができ、飼養管理の改善が認められる。また増体量や枝肉等級で、改善される傾向がある。

[キーワード]肥育、卵巣除去、発情行動、飼養管理、増体、枝肉等級

[担当]福井畜試・家畜研究部・大家畜研究グループ
[連絡先]電話 0776-81-3130
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(大家畜) 
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
 肉牛の肥育では、性行動に関して雄は去勢を行うのに対し、雌は無処置である。そのため発情期の飼料摂取量低下、乗合い闘争によるストレス、事故等の問題がある。
 そこで、卵巣摘出器(モウカッター)を使用し、発情を抑えることで、群飼管理および枝肉成績などへの効果について検討する。

[成果の内容・特徴]
 試験は、12か月齢の黒毛和種雌牛を9頭用い、12か月齢で卵巣を摘出した卵巣摘出区5頭と、無処置区4頭に分けて飼養(各牛房面積:24.3m2)し、30か月齢で出荷した。
 その間の牛同士の攻撃、闘争、乗合い、鳴き声の4つの問題行動について、朝夕の飼料給与時の各々90分間の回数を調査した。
1. 問題行動では、卵巣摘出区の方が無処置区と比べて、頻度が漸減し、出荷前には行動が見られなくなる(図1)。
2. 飼料効率や増体では卵巣摘出区の方が高くなる傾向にある(表1図2)。
3. 枝肉格付成績では、卵巣摘出区の方が皮下脂肪の厚さが薄くなる傾向が認められる(表2)。

[成果の活用面・留意点]
1. 雌牛肥育を行う農家における飼養管理や群管理の改善に活用できる。
2. 飼料効率や枝肉等級の向上が図れることから、経営改善も期待できる。
3. 卵巣除去器具の使用にあたっては、腹膜炎等の事故の危険性があるため、十分な臨床経験を持つ者が行う必要がある。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:和牛雌牛肥育試験
予算区分:県単
研究期間:2000〜2002年度
研究担当者:吉田靖、川森庸博、野村賢治、山崎昭治

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