牛体外受精におけるカテキン類添加による受精成績向上


[要約]
牛の体外受精において、ヘパリン・テオフィリンの代わりに抗酸化物質であるカテキン類を培地に添加し媒精を行うと受精成績が向上する。

[キーワード]体外受精、カテキン、受精

[担当]東京畜試・応用技術部、家畜改良事業団・家畜バイテクセンター
[連絡先]電話 0428-31-2171
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(大家畜)
[分類]科学・参考

[背景・ねらい]
 家畜胚の体外培養系における発生阻害要因として、活性酸素種による酸化ストレスが報告されている。受精過程の中でも適正範囲を超え過剰に産生された活性酸素は阻害的働きに転ずると考えられており、抗酸化物質の添加により受精成績が向上するとの報告もある。そこで、近年抗酸化力で注目を集めている緑茶由来成分のカテキン類を体外受精培地に添加し、受精成績におよぼす効果について検討する。

[成果の内容・特徴]
1. 試験にはカテキン類の中で最も抗酸化力が強いエピガロカテキンガレート(EGCg)を用いた。
2. 凍結融解精子をグルコース欠BO液(BO液)で希釈洗浄し、EGCgを加えた10mg/mlBSA添加BO液で最終精子濃度を1×107/mlに調整した精子懸濁液に体外成熟卵子を導入して媒精を行った。
3. EGCgを0.1,0.2および0.4mMの割合で加えたBO液で媒精を行い、媒精後8時間の精子の卵子への侵入状況を観察した。対照にはEGCg無添加の区を設けた。各濃度区の精子侵入率は、無添加区、0.1 mM添加区と比較して0.2 mM添加区では有意に高く、0.4 mM添加区は全ての区に対して有意に低かった。多精子侵入の割合は各濃度区とも有意な差は見られなかった(表1)。
4. EGCg各濃度区で媒精後、卵丘細胞と共培養により発生成績を検討した(表2)。媒精後48時間の分割率は無添加区と比較して0.1および0.2 mM添加区では有意に高く、0.4 mM添加区では有意に低かった。また、培養卵子数に対する胚盤胞の発生率は各濃度区間で有意な差は認められなかった。
5. 従来一般に行われているヘパリン・テオフィリンおよびBSA添加BO液(ヘパリン・テオフィリン区)と0.2mMEGCg添加BO液(EGCg区)による体外受精後の胚分割成績を比較した。各区とも媒精後48時間分割率は有意な差が見られず、同等の効果があることが明らかとなった(表3)。

[成果の活用面・留意点]
1. 植物由来の天然物質を使用した、ヘパリン・テオフィリン法に代わる新しい体外受精方法として期待できる。
2. カテキン類の作用機序の解明、至適濃度や個体差等も検討しながら今後も進めていく必要がある。


[具体的データ]




[その他]
研究課題名:牛受精卵の高度開発利用試験
予算区分:都単
研究期間:2003〜2004年度
研究担当者:熊井良子、浜野晴三(家畜バイテクセンター)

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