n−6/n−3比を低くした鶏卵のラットへの給与反応


[要約]
n−6/n−3比を低くした鶏卵をラットに給与すると、炎症・アレルギー反応に増悪的に働くロイコトリエンB4の産生が低下する。

[キーワード]卵用鶏、n−6/n−3、ラット、アレルギー反応

[担当]福井畜試・家畜研究部・中小家畜研究グループ、名古屋市立大学・薬学部
[連絡先]電話 0776-81-3130
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(中小家畜)
[分類]科学・普及

[背景・ねらい]
 食品中のリノ−ル酸系列脂肪酸(n−6)とα−リノレン酸系列脂肪酸(n−3)との比率を低くすることにより、アレルギー症状の軽減や生活習慣病の予防効果があるとされ、これらの脂肪酸組成を改善した機能性畜産物の生産が行われている。そこで、n−6/n−3比を低くした鶏卵をラットに給与し、アレルギー性疾患への有効性を検討する。

[成果の内容・特徴]
1. 低n−6/n−3区の鶏卵は屑米(72.8%配合)主体の飼料にエゴマ種子を10%添 加し、対照区の鶏卵は市販配合飼料を給与した。生産された鶏卵の卵黄を凍結乾燥し、それぞれのn−6/n−3比を求めたところ、1.13と6.36であった(表1)。ラットへの給与飼料には無脂肪精製飼料に凍結乾燥卵黄を重量比10%の割合で添加した(表2)。
2. 供与8週後のラット多形核白血球の脂肪酸組成は低n−6/n−3区で対照区に比べ、α−リノレン酸系列のα−リノレン酸(C18:3n-3)は約2倍に、エイコサペンタエン酸(C20:5n-3)は約6倍に増加した。一方、リノール酸系列のアラキドン酸(C20:4n-6)は26%減少した。また、n−6/n−3比は2.98と対照区の6.94に対して低下した(表3)。
3. Ca2+イオノフォア刺激で産生される多形核白血球のロイコトリエンBの産生は、ロイコトリエンB4のレベルで前駆体であるアラキドン酸の減少を反映して低n−6/n−3区で25%減少した。また、エイコサペンタエン酸由来のロイコトリエンB5は対照区では検出限界以下であったが、低n−6/n−3区では検出された。しかし、B4とB5を合わせたロイコトリエンBの総量は15%減少した(表4)。
4. ロイコトリエンΒ4は白血球の強力な走化性因子であり、炎症・アレルギー反応に対して増悪的に働く。ロイコトリエンΒ5の活性はΒ4の数十分の一であるとされており、低n−6/n−3鶏卵は効果的にロイコトリエンB4及びロイコトリエンΒの総量を低下させることで炎症・アレルギー反応に対して有効であると考えられる。

[成果の活用面・留意点]
1. n−6/n−3比を低くした鶏卵で炎症・アレルギー反応への有効性が確認できたことから、同鶏卵における機能性の1要因として参考にできる。
2. アレルギー反応に対する体質改善に有効であると考えられるが、この鶏卵でアレルギーが生じなくなるのではないことから注意する必要がある。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:機能性畜産物の開発
予算区分:県単
研究期間:2000年度
研究担当者:澤田弘江、山口良二、加藤武市、立松憲次郎(名市大)、池本敦(名市大)奥山治美(名市大)
発表論文等:
1)澤田・山口・立松ら(2001)脂質栄養学Vol 10,No2:(101)
2)アレルギー体質改善用動物性食品 特開2002-360184

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