移植用シバ苗育成に適する時期と場所


[要約]
移植用シバ苗を早期育成する場合は、無加温ビニールハウス内の高床で3月末から育苗すると5月中旬に移植可能苗は37.5%に達し、5月下旬にはハウス内の高床、地面ともに40%台になる。露地育成では、3月中旬から育苗すれば6月初旬に移植可能苗は59.5%になる。

[キーワード]シバ、草地造成、ポット苗、移植

[担当]茨城畜セ・肉牛研・飼養技術研究室
[連絡先]電話 0295-52-3167
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
 県内公共牧場では、肥培管理・草地更新の困難な傾斜放牧地が多いことや放牧頭数の減少等から、生産性は高くないが低コストで維持管理が容易なシバ草地へ転換が求められている。栄養繁殖系のシバ品種を用いたシバ草地造成ではシバを育苗し移植する方法が一般的であり、園芸用セルトレイを利用したポット移植法はシバ草地造成に必要なシバを十分確保できない場合に有効である。シバの移植時期は梅雨時期が適期であるが、移植時期を早めることで生長期間を長くできる利点があるので、早期にシバ苗を生産するための育苗の時期や場所について検討する。

[成果の内容・特徴]
1. 移植時期を早める場合は、無加温ビニールハウス(以下ハウス、図1)を利用して3月末から育苗すると5月中旬時点に高床で育苗した場合のみ移植可能苗(図2)が得られ37.5%に達し、また、5月下旬時点で高床、地面ともに移植可能苗は40%台になる(図3)。
2. 3月中旬以前からハウスを利用しても、3月下旬から育苗した移植可能苗割合を越えない(図3)。
3. 6月初旬時点の移植可能苗は、ハウス内の地面で3月末から育苗すると62.5%になり、露地で3月中旬から育苗すると59.5%になる(図3)。
4. 6月初旬以降に移植を行う場合、露地育苗はハウス地面作成苗と同程度の移植可能苗を確保でき、施設を利用しない分生産コストを低減できる。また、現地(牧場等)での育苗が可能になる。

[成果の活用面・留意点]
1. 移植用シバ苗の早期育成技術に役立つ。
2. シバ苗の移植密度は、移植苗の乾燥を防ぐために2苗/所/m2以上必要とされており、根の発達が根鉢形成に達しない苗でも寄せ植えすれば移植に利用できる。
3. 育苗場所は、十分な日照を得られ、水の補給が可能な場所を選ぶ。
4. 培養土は、雑草種子混入が少ない市販の土の利用がよく、保水性・保肥性を向上させるためバーミュキュライトを50%程度混合する。施肥は、園芸用小粒緩効性肥料(1粒/セルの割合で施肥)を出芽時あるいは葉が青くなる成長開始時に行う。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:山間傾斜地におけるシバ草地造成技術の確立試験
予算区分:県単
研究期間:2000〜2004年度
研究担当者:茨田潔、矢口勝美

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