付着乳酸菌事前発酵液の稲発酵粗飼料への添加効果


[要約]
付着乳酸菌事前発酵液は、イネに付着している野生の乳酸菌を事前に増殖させた自家製乳酸菌発酵液であり、サイレージ調製時に添加することで稲発酵粗飼料の発酵品質を改善することができる。

[キーワード]サイレージ、飼料イネ、粗飼料、乳酸菌

[担当]三重科技セ・畜産研究部・大家畜グループ
[連絡先]電話 0598-42-2029
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(草地)
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
 飼料イネは付着乳酸菌数が少ないことや茎が中空であること、また、軟弱な土壌条件下での収穫調製作業を強いられる場合もあり、発酵不良や発酵品質の不安定性が懸念される。
 一方、植物に付着する乳酸菌の中には、土地や気候条件に対応して活発に生育するものがいることから、これらを事前に増殖させた乳酸菌液がサイレージ添加剤として有効に利用できるならば、稲発酵粗飼料の発酵品質を改善することができる。
 そこで、付着乳酸菌からサイレージ発酵促進に有効な乳酸菌叢を得るための事前発酵技術を開発し、さらに、調製された付着乳酸菌事前発酵液の添加効果を検証する。

[成果の内容・特徴]
1. 付着乳酸菌事前発酵液の調製方法は、まず、材料イネ200gを蒸留水1リットル中でミキサー磨砕し、二重ガーゼでろ過した緑汁液を1リットル容量のポリビンに回収する。つぎに、グルコース20g(2.0%相当量)を緑汁液に添加し、30℃で2〜3日間嫌気培養する。
2. 付着乳酸菌事前発酵液は、培養1日目でpHが3.62まで顕著に低下し、培養7日目のpHは3.14まで低下する。また、乳酸生成の促進と酪酸生成およびVBN/TN比も極めて低く、付着乳酸菌事前発酵液における不良発酵は認められない(表1)。
3. 供試したイネの可溶性炭水化物は11.6%DM、緩衝能127mEq/kgDMとサイレージの材料草に適する反面、付着乳酸菌数は104と推奨値より低い(表2)。
4. 材料イネ原物当り0.2%の付着乳酸菌事前発酵液を添加したサイレージ発酵品質は、無添加のサイレージに比べて乳酸生成が高い傾向を示し、酪酸の生成が抑制される。その結果、V−スコアは80点以上を示し、稲発酵粗飼料の発酵品質を改善する(表3)。
5. 付着乳酸菌事前発酵液は培養日数の違いによる添加効果も認められ、特に培養2日および3日培養したサイレージ発酵品質が良好であることから、付着乳酸菌事前発酵液の培養日数は2〜3日間を目安とする(表3)。

[成果の活用面・留意点]
1. 付着乳酸菌事前発酵液は、グルコースの代わりに市販の砂糖、蒸留水の代わりに水道水でも調製可能であることから、低コストな自家製乳酸菌発酵液(サイレージ添加剤)として利用できる。
2. 付着乳酸菌事前発酵液に用いる材料イネのサンプリングは、晴天時に実施する。また、土壌混入による不良発酵を回避するため、健全なイネの株元から約10〜15cmの高さで刈り取る必要がある。
3. 細材料イネに農薬散布が実施された場合でも、付着乳酸菌事前発酵液の調製が可能か否かを検討する必要がある。


[具体的データ]




[その他]
研究課題名:サイレージの発酵品質向上技術の開発
予算区分:県単
研究期間:2001〜2002年度
研究担当者:平岡啓司、山本泰也、浦川修司、山田陽稔、苅田修一(三重大学)、後藤正和(三重大学)
発表論文等:平岡ら(2003)日草誌、49(5):460-464

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