1−メチルシクロプロペンのニホンナシ「幸水」に対する日持ち性向上効果


[要約]
1−メチルシクロプロペンは、密封条件下において500ppb以上の処理濃度で16時間曝露処理することにより、ジベレリン処理の有無に関わらず、ニホンナシ「幸水」の収穫果実の日持ち性を向上させることができ、出荷箱50箱規模の大量処理でも効果が得られる。また、処理濃度1000ppbでの4時間処理でも同様の効果が得られる。

[キーワード]ニホンナシ、幸水、日持ち性向上、1−メチルシクロプロペン

[担当]埼玉農総研セ・園芸研究所・果樹担当
[連絡先]電話 0480-21-1113
[区分]関東東海北陸・果樹
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
 ニホンナシ「幸水」は、盛夏期に収穫されることもあり、食味の良好な適熟果の日持ち性は5日程度に限られるため、市場流通に要する時間を考えると、食味が不十分であっても未熟果を収穫せざるを得ない。また、流通段階での過熟果の発生が価格を低迷させる要因のひとつにもなっている。そこで、高品質な「幸水」の適熟果実の長期安定供給を目的として、エチレン作用抑制効果を持つ1−メチルシクロプロペン(以下1−MCP)のニホンナシ「幸水」に対する日持ち性向上効果を検討する。

[成果の内容・特徴]
1. 「幸水」収穫果に対し1−MCPを密封条件下で16時間曝露処理することにより、処理しない果実と比較して表面色および食味熟度の進行、果肉硬度の軟化が抑制され、日持ち性が向上する(表1)。
2. 1−MCPを処理しない場合、日持ち性は適熟の果実で5日程度、やや未熟の果実で7日程度であるのに対し、500ppb、または1000ppbの1−MCPで処理した場合、適熟の果実で10日程度、やや未熟の果実で14日程度の日持ち性が認められる。250ppb処理では収穫後10日目から果心の褐変が多発することから、500ppb以上の処理濃度が実用的である。また、ジベレリン処理によって成熟が促進された果実においてもジベレリン無処理の果実と同様の日持ち性向上効果が認められる(表2)。
3. 果実を出荷用ダンボール箱に入れた状態で密封庫内に置き、処理を行っても十分な効果が得られるが、目張りした出荷用ダンボール内での処理では効果が劣る(表1)。
4. 1000ppbでの処理は、8時間および4時間の短時間処理でも16時間処理と同等の効果が得られる(表2)。
5. 処理時期について、収穫当日、収穫1日後の処理は効果が得られるが、収穫2日後の処理は効果が劣る(表2)。
6. ポリエチレンフィルム製テント式処理施設(写真1)を用いた10kg詰の出荷用ダンボール50箱規模での500ppb濃度処理においては、箱内の上下および箱積の位置の違いに関わらず日持ち性が向上したが、処理10日後では、箱積位置の上段では効果が高く、下段の方では効果が低くなる傾向が見られた(表3)。

[成果の活用面・留意点]
1. 現在、水を加えることによりガス化する粉状の剤が製剤化されているが、所定濃度で曝露処理を行うためには気密性の高い密封庫が必要である。
2. 本剤は現在、植物調節剤として登録申請中である。
3. 「幸水」以外の品種でも日持ち性向上効果が確認されている。
4. 果実の成熟は、気象条件、樹勢、収穫期によっては果肉先熟傾向になる場合があるので、適宜試食する等、適期収穫に努める。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:1−MCP剤のナシに対する日持ち性向上効果の検討
予算区分:一般委託
研究期間:2000〜2003年度
研究担当者:島田智人

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