脱渋処理施設を用いた1−メチルシクロプロペンによる完全甘ガキ軟化防止法


[要約]
完全甘ガキ「松本早生富有」に1−MCPを処理することで、収穫後に発生する急激な軟化を、14日程度抑制することができる。尚、処理施設として気密性のある渋ガキの脱渋処理施設を利用することにより、一度に大量の果実を処理することが可能である。

[キーワード]カキ、1−MCP、果実軟化、脱渋処理施設

[担当]岐阜農技研・栽培部
[連絡先]電話 058-239-3133
[区分]関東東海北陸農業・果樹
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
 「松本早生富有」をはじめとする早生・中生の完全甘ガキ品種では、収穫後急速に軟化が進行する着色異常果実が多く発生し問題となっている。これらの果実は、健全果実と比べて、果頂部が同心円状に赤く着色するため(図1)、選果段階でかなりの着色異常果実は選別できるが、外観だけでは選別できない場合もあるため、早急な原因究明と防止法の確立が求められている。 
 1−メチルシクロプロペン(以下1−MCPとする)は、エチレン作用阻害効果を有し、渋ガキ脱渋後の水分ストレスに起因するとされる軟化に対しては、その防止効果が明らかになっていることから、本剤による完全甘ガキに対する軟化防止効果と生産現場にある脱渋用施設を用いた大量処理方法について検討した。

[成果の内容・特徴]
1. 1−MCPの処理は、気密性のある施設(図2)を使用して、濃度1,000ppbで14時間、室温下で行う。処理効果を安定させるために、ファンを使用して施設内の空気を攪拌する。
2. 処理のための施設は、「西村早生」等の脱渋用に使用されているものを利用すると良い。内容積は54立方mで、最大10tの果実を同時に処理することができる。
3. 1−MCPを処理することにより、収穫14日後まで着色異常果実の軟化を抑制することができる。ちなみに無処理の着色異常果実は、収穫3日後から軟化が現れ始め、収穫14日後には約30%の果実が軟化する(図3)。
4. 1−MCPを処理した果実では、果皮色の進行は緩やかであり、収穫10日後ではカラーチャート値で0.9の増加である。一方、無処理の果実では、軟化の発生もあり急速に進行し、カラーチャート値で1.4増加する(表1)。

[成果の活用面・留意点]
1. 1−MCP処理による軟化抑制効果は14日程度で、その後は急速に軟化が進行する。
2. 1−MCPは、現在カキに対しての農薬登録がない。
3. 1−MCPの効果は、着色異常果実において認められているが、芯腐れ等他の要因による軟化防止効果については、不明である。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:カキの軟化症発生要因の解明と防止技術の開発
予算区分:県単
研究期間:2001〜2005年度
研究担当者:新川 猛、尾関 健、稲荷妙子(岐女大)、三井萬丈(ロームアンドハースジャパン)

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