クリプトモス培地を用いたイチゴの全量基肥高設ベンチ栽培


[要約]
肥効調節型肥料のロングトータル313-180日タイプ及び270日タイプを窒素で株当たり各々2.0g、計4.0g、珪酸加里肥料を加里で1.0g、ようりんを5.0g定植時に培地上へ施肥する全量基肥高設ベンチ栽培は、液肥混入機を必要としないため設備費を低減し、養液栽培と同程度の収量性がある。

[キーワード]クリプトモス混合培地、肥効調節型肥料、高設ベンチ

[担当]栃木農試・栃木分場・いちご研究室
[連絡先]電話 0282-27-2715
[区分]関東東海北陸農業・野菜
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
 イチゴの高設ベンチ養液栽培は、作業性の改善、労働強度の軽減、土づくりの省力化、土壌伝染性病害回避等が図れることから年々栽培面積が増加している。しかし、システム導入設備費の高いことが普及の妨げとなっている。そこで、高設ベンチ栽培で液肥混入型給液装置を用いない簡易で安価な潅水装置だけによる全量基肥栽培を行うため、適正な肥効調節型肥料のタイプと施肥量を明らかにする。

[成果の内容・特徴]
1. 高設ベンチは栃木農試が開発した排出液を出さない環境保全型栽培ベンチ(図3)を用い、培地はクリプトモス混合培地(容積比、クリプトモス7:パーライト3)とし、品種は‘とちおとめ’を用いる。肥料は肥効調節型のロングトータル313-180日タイプを株当たり窒素成分で2.0gとし、ロングトータル313-270日タイプを2.0g、合計4.0g、さらに珪酸加里を株当たり加里成分で1.0g、ようりんを5.0g施用する。
2. 潅水は1日数回行い、1回の潅水量は株当たり20〜30ミリリットルとし、防水シート内に貯留した余剰液の水位が、培地の最深部から−3〜−5cmになるように調節する。培地内溶液のpHは養液栽培が12月中旬まで5.5前後、以降3月まで5.0程度で推移するのに対し、全量基肥窒素4.0gでは5.5〜6.0程度で養液栽培に近い値で推移する。また、培地内溶液のECは12月中旬まで養液栽培が基肥栽培よりやや高く推移するが、それ以降は同じような動きをする(図1)。
3. 収量は基肥窒素4.0gが最も多く、養液栽培より約20%増収となり、1果重と糖度は同等である(表1)。
4. 従来の高設ベンチで必要な液肥混入型給液装置の価格約100〜150万円が省け、数万円程度の簡易な潅水装置のみで栽培が可能である。

[成果の活用面・留意点]
1. 未使用のクリプトモス混合培地は肥料成分を吸着する特性があるため、定植前にあらかじめ液肥を潅水し、培地に肥料成分を吸着させておく。
2. 肥効調節型肥料のロングトータルは、加里の溶出が不安定で、生育期間中に加里欠乏症が発生しやすいので、基肥に珪酸加里肥料を施用する。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:クリプトモスを用いたイチゴの養液栽培技術確立
予算区分:県単
研究期間:1998〜2001年度
研究担当者:畠山昭嗣、佐藤文政、柴田和幸、渡邊修孝、植木正明
発表論文:植木ら(平10)いちご栽培装置.特願平10−102048

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