高冷地におけるバンカープラント法を利用したキャベツの有機栽培


[要約]
キャベツを有機栽培する場合、定植の3週間前にバンカープランツとして圃場周 囲にデントコーンを、畦間に白クローバをそれぞれ播種すると、虫害が軽減されキャベツの可販収量が大幅に増加する。

[キーワード]バンカープラント法、キャベツ、有機栽培、高冷地

[担当]山梨総農試・高冷地分場・野菜作物科、栽培部・野菜科
[連絡先]電話 0551-28-2496
[区分]関東東海北陸農業・野菜
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
 山梨県北部の高冷地で野菜の有機栽培に取り組む農家が50戸程ある。当場では露地野菜の有機栽培試験を実施してきたが、アブラナ科野菜は虫害が多発し安定生産が難しい。そこで、特に虫害を受けやすいキャベツを供試し、有機栽培による可販収量の向上を目標とし、圃場の周囲や農作物の間に植物を栽培すると作物の虫害を軽減する効果があるとされるバンカープラント法の利用効果を検討した。

[成果の内容・特徴]
1. バンカープランツとして、圃場周囲にデントコーンを、畦間に白クローバを用い、いずれもキャベツ定植の3週間前に播種すると、それぞれ草丈はキャベツの結球が始まる8月上旬までには2m、20cmに、最終的には3m、25cm程度に達する(表1)。
2. バンカープラント法の利用により、コナガやアブラムシによるキャベツの被害が軽減され、可販収量は慣行の有機栽培と比べて大幅に向上する(図1表2表3)。
3. バンカープランツを作付けると、キャベツ圃場にゴミムシ類やクモ類などの徘徊性土着昆虫等が多数生息するようになる(図2)。
4. バンカープランツの効果は、遮断、視覚的カモフラージュ、匂い、忌避等や、土着天敵温存によるためと考えられている。

[成果の活用面・留意点]
1. デントコーンは初期生育の早い早生品種「DK689」や「DK670」を、白クローバは生育が旺盛で耐踏圧性の高い品種「フィア」を用いる。
2. 播種法は、デントコーンが畦幅50cm×株間25cmの2条播きとし、白クローバが0.2kg/aの播種量で散播する。
3. 施肥は肥効が持続しやすい緩効性の肥料を用い、バンカープランツの播種直前に行う。
4. キャベツはワックスが多くアオムシやコナガの食害を受けにくい品種「YR早どり錦秋」を用いる。
5. 本試験は、野菜の多品目・小規模作付けを前提とした約3aの結果であるため、キャベツ単作の大規模栽培への適応性や効果は不明確である。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:野菜の有機栽培を目指した共栄作物の利用効果
予算区分:県単
研究期間:2001〜2002年度
研究担当者:赤池一彦、平林正光、窪田 哲
発表論文等:1)赤池ら(2004)山梨総農試研報 14.

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