ハウス結露水接触による施設野菜のフタル酸エステル付着


[要約]
塩化ビニルフィルム中にフタル酸ジエチルへキシル(DEHP)が32〜36%含まれていた。ビニルハウス内でフタル酸エステルはビニルフィルムに付着した水分に伴って動くため、結露水に接触させないことが野菜への付着を防ぐうえで重要である。

[キーワード]野菜、施設、農業用フィルム資材、フタル酸エステル

[担当]埼玉農総研・農産物安全性担当
[連絡先]電話 0480-21-1113
[区分]関東東海北陸農業・野菜
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
 施設またはマルチ栽培では、被覆用のフィルム資材が使われる。これら資材の中には製造過程で可塑剤が混合され、内分泌攪乱化学物質、いわゆる環境ホルモンと疑われるフタル酸エステルを使用しているものがある。
そこで、安全な農産物の生産供給を図るために、土壌、作物へのフタル酸エステルの残留実態や経路を把握し、付着防止方策を明らかにする。

[成果の内容・特徴]
1. 農業用フィルム資材の塩化ビニル製フィルム中にフタル酸ジエチルヘキシル(DEHP)が32〜36%含まれているが、ポリオレフィン、ポリエチレン製資材にはフタル酸エステルは検出されない(表1)。
2. ビニルハウス内の結露水中に、DEHPが0.12mg/L含まれている。純水を容器に入れハウス内に放置してもDEHP、フタル酸ジブチル(DBP)とも定量限界(0.02mg/L)以下である(表2)。
3. ビニルハウス内外の土壌のDEHP濃度は、ハウス内のビニルフィルムに近い周縁部土壌で高い(表3)。
4. DEHP、DBPのハウス内気中濃度(DEHP:110μg/m3、DBP:<30μg/m3)は、厚生労働省の室内環境指針値以下である。
5. DEHP、DBPの分解は早く、1週間程度で初期濃度の1/10以下になる(データ省略)。
6. ビニルハウス内で栽培したコマツナのDEHP濃度は、0.07〜0.15mg/kgである。収穫1週間前から収穫日までの積算気温とコマツナのDEHP濃度との関係に一定の傾向は認められない(表4)。

[成果の活用面・留意点]
1. フタル酸エステルの内分泌攪乱作用の有無については現在のところ確定していない。
2. ポリオレフィン、ポリエチレンまたは、フタル酸エステルを含有しない生分解性資材を用いれば、フタル酸エステルの付着は完全に回避できる。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:農業資材に由来する化学物質の野菜等への影響回避技術の開発
予算区分:県単
研究期間:2001〜2003年度
研究担当者:佐藤賢一、佐藤岩夫、中村幸二

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