夏秋トマト長段栽培における生育ステージ別施肥・かん水管理指針


[要約]
長段栽培(15段)におけるN施用量は15g弱/株(最大値は、6段花房開花期の180mg/日・株)、かん水量は200L/株(7〜9段花房開花期の2.0L)程度が好ましいことがわかった。また、収穫開始から摘心期まで硝酸イオン濃度は、4,000〜6,000ppmが適当である。

[キーワード]夏秋トマト、養液土耕栽培、生育ステージ、栄養診断、養水分管理指針

[担当]愛知農総試・山間農業研究所・園芸グループ
[連絡先]電話 05368-2-2029
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・総合研究、関東東海北陸農業・関東東海・野菜
[分類]技術・普及


[背景・ねらい]
 夏秋トマトの長段栽培では、(1)梅雨明け以降の著しい草勢低下、(2)労力不足に起因する栽培管理の遅れ、(3)病害虫の多発等により、収穫段数に見合う収量が確保できていない事例が目立つ。養液土耕栽培は、吸収量に合わせた日管理の栽培方式で、生育スピードの季節変化が極端に大きい長段栽培に適した栽培方式と考えられる。また、養水分管理の省力化や環境負荷の削減にも大きな効果が期待できる。そこで、栄養診断技術を活用し、作柄安定と高生産性を実現する生育ステージ別の施肥・かん水管理指針を作成する。

[成果の内容・特徴]
1. 定植〜第2花房開花期までのN施用量は、控え気味とする。第3〜5花房開花期のN施用量(mg/株・日)は、週単位で40から120mgまで増加させる。着果負担は収穫開始期にピークとなる。負担がピークに達する1週間前の第6花房開花期にN施用量を最大の180mgとし、以後、段階的に削減する(図1)。1作当たりのN施用量は、15g弱/株、10a換算で29.5kg程度が適当と考えられる。
2. かん水量は、第2花房開花期までは控え気味とする。第3〜7花房開花期までのかん水量/株・日は、週単位で0.4から2.0 Lまで増加させ、以後8月上旬まで2.0Lを維持する。8月中旬以降は段階的に削減する。ただし、終日雨天の場合は上記の1/4、曇天では1/2のかん水量とする(図1)。
3. 葉柄搾汁液の硝酸イオン濃度は、天候に恵まれたH14年は高く、日照の少なかったH15年は低めに推移した。収穫開始から摘心までの硝酸イオン濃度は、4,000〜6,000ppmが適当と考えられる(図2)。
4. 養液土耕区の可販果収量は16tを超え、平均果重210g、糖度5.5〜6.5で、長段栽培に適した生産性の高い栽培方式であることを実証できた(図34)。

[成果の活用面・留意点]
1. 夏秋トマトは、転作田を活用した無加温施設で12〜13段摘心栽培されている事例が多い。この場合の施肥・かん水量は、上記モデルの1割減とする。
2. 初期生育が旺盛になりやすい作型であるので、若苗定植、初期の低温管理は避ける。
また、5〜6段花房付近で茎が最も太く、葉も大きい草姿づくりを目指す。
3. 長段栽培の生産安定には摘果による着果管理が不可欠となる。果房段位別着果数は、1〜5段果房で3〜4果、6〜12段で2〜3果、13〜15段で3〜4果を目安とする。

[具体的データ]

[その他]

研究課題名:トマト・メロン主体生産体系における高生産性・環境保全型養液土耕の確立
予算区分:国補、地域基幹
研究期間:2002〜2003年度
研究担当者:伊藤裕朗、河井弘康


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