稲発酵粗飼料中のβーカロチンによる肥育牛のビタミンA制御


[要約]
稲発酵粗飼料は、熟期が進むにつれβーカロチン含量が低下するが、調製後約半年経過すると熟期間の差はなくなる。βーカロチン給与量を推定式にあてはめると、血液中のビタミンA濃度を推定できるので、ビタミンA制御肥育に利用可能である。

[キーワード]飼料イネ、肥育牛、βーカロチン、ビタミンA

[担当]三重科技セ・畜産研究部・大家畜グループ
[連絡先]電話 0598-42-2029
[区分]関東東海北陸農業・総合研究・畜産草地(大家畜)
[分類]技術・普及


[背景・ねらい]
 肉用牛の肥育技術体系に稲発酵粗飼料(飼料イネ)を導入するため、飼料イネが持つ栄養成分のうち肉牛の肥育成績に大きく関与する思われるβーカロチンおよび生体内で生成されるビタミンAの関係について検討した。三重県は和牛雌肥育牛の高級ブランドを有することから和牛雌牛のビタミンA制御肥育体系肥育後期における飼料イネ給与の導入を図った。

[成果の内容・特徴]
  平成14年9,10月に収穫調製した飼料イネ(クサホナミ)を肥育後期の48週から出荷(平成15年1月から9月)まで2週間間隔で熟期順に開封し、順次給与試験を実施した。
1. 飼料イネ中に含まれるβーカロチン含量は出穂期、穂揃期、乳熟期、黄熟期、成熟期と熟期が進むにしたがい低下する。しかし、調製後約半年(翌年4月)以降、含有量の高い熟期のβーカロチン含量が低下し、熟期間の差はみられれなくなる(図1)。また、飼料イネの採食量は全期間を通じ計画量であり、調製半年までの飼料イネと半年を経過した飼料イネの間に嗜好の変化はみられない。
2. 肉牛体重1kgあたりのβーカロチン給与量と血液中のビタミンA濃度(IU/dl)との間には相関がある。(図2
3. 肥育牛の血液中ビタミンA濃度(IU/dl)は、図2の回帰式およびβーカロチン1mgがビタミンA400IUに変換されると言われていることから導かれる式1にあてはめることにより推定でき、図3のとおり実測値とほぼ一致する。
4. βーカロチンが測定できない場合は、試験的に飼料イネを給与し、血液中のビタミンA濃度を測定することにより式2からβーカロチン供給量を推定できる。

[成果の活用面・留意点]
1. βーカロチン含量を把握した飼料イネについては、給与量を推定式にあてはめることにより血液中ビタミン濃度を推定できるため、肥育後期のビタミンA制御に利用できる。
2. βーカロチンを随時測定できる環境にない場合、半年経過後の飼料イネを肥育後期の牛に給与し、血液中ビタミンA濃度からβーカロチン給与量推定する。この推定値を参考に、飼料イネを給与することにより安定したビタミンA制御が可能となる。
3. 血液中ビタミンA濃度の推定は、ビタミンA制御により肝臓からのビタミンA供給が途絶える肥育後期のみで有用であり、肥育前期以前の牛にはあてはまらない。
4. 今回の成果は、和牛雌牛肥育体系に利用可能で、去勢牛肥育に対しては効果を確認していない。

[具体的データ]

[その他]

研究課題名:飼料イネに対応した省力的生産・調製・利用技術の確立
予算区分:国補(地域基幹農業技術体系化促進研究)
研究期間:2000〜2003年度
研究担当者:森昌昭、山田陽稔、平岡啓司


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