飼料用モミの加工処理は黒毛和種肥育牛の産肉性に影響しない


[要約]
加工処理として圧扁またはサイレージ化(SGS)した飼料用モミを圧扁トウモロコシと代替し給与した黒毛和種肥育牛は対照区に比べ、DGが低い傾向がみられるが、脂肪交雑、肉質等級等の枝肉成績に差異はない。

[キーワード]黒毛和種肥育牛、飼料用モミ、枝肉成績、脂肪交雑

[担当]長野畜試・肉用牛部 
[連絡先]電話 0263-52-1188
[区分]関東東海北陸農業・総合研究、畜産草地(飼料イネ利用)
[分類]技術・参考


[背景・ねらい]
 水田転作作物として飼料イネの生産及び利用が図られ稲発酵粗飼料の利用が推奨されている。一方、子実部(飼料用モミ)と茎葉部(ワラ)とを分離した肥育牛への利用も考えられる。そこで、加工処理した飼料用モミ(完熟期にコンバイン収穫した「トドロキワセ」)を黒毛和種肥育牛に全期間給与して、飼料用モミの加工処理法の違いおよび配合割合が産肉性に及ぼす影響を明らかにする。

[成果の内容・特徴]
1. ポリ樽に密閉調製したソフトグレインサイレージ(モミSGS)および乾燥後飼料工場で1.8mm厚に蒸煮または蒸気圧扁処理した圧扁モミの2通りについて、一定量を圧扁トウモロコシと代替給与した場合(表1)の産肉性を比較したところ以下の知見を得た。ただし、供試牛は黒毛和種肥育牛35頭で、SGS15%区(去勢4頭、雌2頭)、圧扁15%区(去勢4頭、雌2頭)、圧扁30%区(去勢7頭、雌5頭)の3試験区、給与期間は去勢牛9〜28ヶ月齢、雌牛9〜30ヶ月齢である。
2. 飼料用モミ給与試験の全期間DGは各区間に有意な差はないが、飼料用モミ給与区が対照区に比べ低い傾向が窺える(表2)。
3. 枝肉成績は各区間に差は認められない(表3)。
4. 枝肉重量は飼料用モミ給与区が少ない傾向が見られるが、ロース芯面積は大きくなる。牛肉の評価となる脂肪交雑(BMS)はSGS15%区および圧扁モミ15%区が対照区、圧扁モミ30%区より高い値になる。飼料用モミ給与区はその他の項目についても対照区と同様な値となっている。このことより加工処理した飼料用モミを圧扁トウモロコシの乾物15%または乾物30%代替し給与しても枝肉成績へ影響は認められない。

[成果の活用面・留意点]
1. 飼料用モミは、水稲を栽培できる地域のおいて肥育牛飼料として利用することができる。
2. 飼料用モミは籾殻が付着しているため圧扁トウモロコシと代替した場合、配合飼料のTDNが低くなるので、籾殻の部分は粗飼料として換算する必要がある。
3. モミSGSを肥育牛に給与すると未消化モミの排せつが多く、消化性を向上させるためにはモミ殻に傷を付ける処理が必要である。

[具体的データ]

[その他]

研究課題名:飼料イネを利用した高品質肉牛生産技術の確立
予算区分 :国補(地域基幹)
研究期間 :1999〜2003年度
研究担当者:伊藤達也、井出忠彦、宮脇耕平、大久保吉啓


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