浸透水の実態と土壌溶液に基づく茶園の硝酸態窒素溶脱濃度の推定


[要約]
茶園における降雨の地下浸透量は樹冠下部がうね間部の約2倍である。また,うね間部に施肥を行った場合,浸透水の硝酸態窒素濃度はうね間部でのみ高い。うね間部と樹冠下部の浸透水量割合を用いて土壌溶液中の硝酸態窒素濃度を補正することにより,茶園から溶脱する硝酸態窒素溶脱平均濃度の推定精度を向上することができる。

[キーワード]チャ、茶園、降雨、浸透水、硝酸態窒素

[担当]三重科技セ・農業研究部
[連絡先]電話 0595-82-3125
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・総合研究、関東東海北陸農業・茶業
[分類]技術・参考


[背景・ねらい]
 茶園における硝酸態窒素溶脱濃度の推定は、うね間(施肥部)と樹冠下(無施肥部)の土壌溶液中の硝酸態窒素濃度を各部位の面積を用いて加重平均することにより行ってきた(H14関東東海北陸研究成果情報)。しかし、茶園は樹形が特殊であり、降雨の地下浸透も不均一と考えられ、浸透実態に基づいたより精度の高い評価手法を検討する必要がある。

[成果の内容・特徴]
1. 成木茶園における降雨の地下浸透量はほ場内で均一ではなく、茶樹を中心として樹冠下で多く、うね間部の約2倍である(図1)。
2. 年間窒素施肥量55Nkg/10aのライシメーター(図2)において、地下1m深の浸透水の硝酸態窒素濃度は、うね間部で90〜23mg/L、樹冠下部では17〜5mg/Lであり、年間をとおして施肥部を含むうね間部が高く、樹冠下部で低い(図3)。
3. 地下1mで採取したうね間施肥部および樹冠下無施肥部における土壌溶液中の硝酸態窒素濃度を部位別浸透水量割合で補正した年間平均濃度推定値は32mg/Lであり、単純に各部位の面積割合で換算した年間平均濃度推定値25mg/Lに比べて、ライシメーターにおける実測値の平均濃度34mg/Lに近い値である(図4)

[成果の活用面・留意点]
1. 現地茶園で簡易に採取できる土壌溶液データを使って,茶園から溶脱する硝酸態窒素溶脱平均濃度の推定精度を、うね間・樹冠下の面積割合による手法と比べ、向上することができる。
2. 細粒黄色土での結果である。
3. 幼木等の育成中の茶園では浸透水の分布は異なると思われる。

[具体的データ]

[その他]

研究課題名:少肥栽培と窒素溶脱防止技術によるかぶせ茶地域の環境保全型茶生産システムの確立
予算区分: 国補(地域基幹)
研究期間: 1999〜2003年度
研究担当者:磯部宏治,青久            


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